2009 Fiscal Year Annual Research Report
単一高分子鎖の直接観察に基づく高分子ダイナミクスの評価
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of non-equilibrium soft matter physics: Structure and dynamics of mesoscopic systems |
Project/Area Number |
21015015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
青木 裕之 Kyoto University, 先端医工学研究ユニット, 准教授 (90343235)
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Keywords | 単一高分子鎖 / 表面・界面 / 高分子ダイナミクス / 応力緩和 / 蛍光顕微鏡 / 近接場光学顕微鏡 |
Research Abstract |
一軸延伸およびそれに続く応力緩和過程におけるポリメチルメタクリレート(PMMA)鎖の形態について評価した。厚さ300μmのPMMAフィルム(分子量M_w=2.1×10^6)を試料として用い、ここに側鎖に蛍光色素であるペリレンを導入したPMMA(M_w=2.0×10^6,M_w/M_n=1.26)を微量に混合し、その形態を近接場光学顕微鏡によって実空間観察した。160℃で伸張比λ_<film>=2.0に延伸したPMMAフィルムを観察したところ、フィルムの延伸方向に沿って配向した単一高分子鎖のコンホメーションが明瞭に観測された。フィルム伸長前後での分子鎖の広がりの平均値の比として分子鎖の伸長比λ_<chain>を定義し、これを100個程度の分子鎖のSNOM像から評価した。伸長過程においてはλ_<chain>=λ_<film>が成立、すなわち単一高分子鎖の伸張比はマクロな伸張比と一致しており、分子鎖全体としての変形がアフィン変形に従っていることが示された。次に、応力緩和過程における分子鎖形態の変化について検討した。その結果、応力緩和の初期過程においては応力とともに複屈折の緩和が進行しているのに対し、λ_<chain>はほぼ一定の値を保っていた。すなわち、短時間領域においてはセグメントの配向が緩和したにも関わらず単一分子鎖全体としては伸長したままであったことが分かった。高分子鎖のセグメントの配向緩和が比較的小さい空間スケールでの運動によって起こるのに対し、分子鎖全体としての形態緩和にはより大きい空間スケールに渡る運動が必要であり、絡み合いによる運動の制限のため、より長い時間を要すると考えられる。
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Research Products
(15 results)