2009 Fiscal Year Annual Research Report
異種固体との接触界面における高分子のダイナミクス
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of non-equilibrium soft matter physics: Structure and dynamics of mesoscopic systems |
Project/Area Number |
21015022
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 敬二 Kyushu University, 工学研究院, 教授 (20325509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 裕史 独立行政法人産業技術総合研究所, 研究員 (10466790)
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Keywords | 高分子 / 界面 / 局所コンフォメーション / ガラス転移温度 / 和周波発生分光 |
Research Abstract |
安価、軽量かつ加工が容易な高分子に無機フィラーを分散させた高分子複合材料は輸送機をはじめとした様々な工業分野で活躍している。これまで異種界面における高分子の構造と物性は内部(バルク)と比較して異なることが明らかとなっている。高分子複合材料の更なる高機能化を目指すには、界面における高分子の構造と物性を正確に把握し、制御する必要がある。本年度は和周波発生(SFG)分光測定に基づき、無機固体界面における高分子の局所コンフォメーションに関する検討を行った。試料として単分散ポリスチレン(PS)および重水素化PS(d_8-PS)を用いた。試料の末端基は開始剤由来のsec-ブチル基である。膜は石英プリズム上に溶媒キャスト法により作製し、石英基板で挟み込むことで、(PS/石英)界面のみを形成させた。その後、真空下で24h、393Kで熱処理を施した。固体界面におけるPSの局所コンフォメーションは、SFG分光測定に基づき評価した。偏光組み合わせはsspおよびpppとした。ssp条件では実験系に対して、垂直方向の官能基の成分を、また、ppp条件では垂直および水平方向の官能基を検出できる。親水化処理前後におけるd_8-PSのSFGスペクトルには、メチレン基の対称伸縮振動、メチル基の対称伸縮振動、メチン基の伸縮振動、メチレン基の逆対称伸縮振動およびメチル基の逆対称伸縮振動が観測された。d_8-PSは主鎖部分が重水素化されているにもかかわらず、CH領域に明確なピークが観測されたことから末端基のsec-Buが石英基板界面に局在化していると考えられる。sspおよびppp条件で得られたピークの強度比はその配向状態と密接に関係している。SFGスペクトルを波形分離し、sspおよびppp条件におけるメチン基の強度を比較した。親水化処理前後におけるsspおよびppp条件におけるメチン基の強度比は、それぞれ、I_<ssp>/I_<ppp>(親水化処理前)=2.53およびI_<ssp>/I_<ppp>(親水化処理後)=2.42であった。これより、親水化処理前後共に、メチン基の配向状態は界面に対してほぼ垂直方向すなわち、末端基は界面に水平に配向していると考えられる。親水化処理前後におけるPSのSFGスペクトルを測定した。PSにおいても末端由来のメチル基のピークが観測された。フェニル基由来のピークはここでは観測されなかった。したがって、基板界面でフェニル基は配向しておらず、ランダムな状態であるといえる。また、石英に親水化処理を施すと、PSメチン基由来のシグナル強度は大きくなった。一方、このシグナルはd_8-PSではこれほど強く観測されていない。このことから、主鎖部のメチン基は基板界面に対して、垂直方向に配向していると予想できる。
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