2010 Fiscal Year Annual Research Report
異種固体との接触界面における高分子のダイナミクス
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of non-equilibrium soft matter physics: Structure and dynamics of mesoscopic systems |
Project/Area Number |
21015022
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 敬二 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (20325509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 裕史 独立行政法人産業技術総合研究所, 研究員 (10466790)
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Keywords | ガラス転移 / 高分子 / 時空間分解蛍光 / 界面選択分光 / 粗視化分子動力学計算 |
Research Abstract |
近年、高分子科学において表面・界面の構造とダイナミクスが注目を集めている。これまで、高分子表面の構造とダイナミクスに関しては多くの事実が集積され、明らかになりつつある。しかしながら、固体界面に関してはほとんど検討されていない。本年度は和周波発生(SFG)分光測定に基づき、無機固体界面における高分子の局所コンフォメーションに関する検討を行った。試料として単分散ポリスチレン(PS)を用いた。膜は石英プリズム上にスピンキャスト法および溶媒キャスト法により作製し、石英基板で挟み込むことで、(PS/石英)界面のみを形成させた。その後、真空下で24h、393Kで熱処理を施した。スピンキャスト膜では3000~3100cm^<-1>にフェニル基由来のピークが明確に観測されたが、溶媒キャスト膜では観測されなかった。スピンキャスト膜は製膜過程において分子鎖が引き伸ばされるため、溶媒キャスト膜と比較して、配向しやすい。バルク中に存在する分子鎖はガラス転移温度(T_g)以上である393Kで24h熱処理を施すと緩和する。しかしながら、界面におけるT_gはバルク試料のT_gより高いため、界面近傍に存在する分子鎖は緩和出来ない。以上の理由により、スピンキャスト膜では分子鎖の配向に伴う、フェニル基の配向が観測されたと考えられる。スピンキャスト膜にさらに高温の423Kで熱処理を施しても、フェニル基の由来のピークは観測された。この結果は、423Kでは界面におけるフェニル基の配向状態が変化しないことを示唆している。したがって、最界面におけるPSのT_gは423Kより高いと結論でき、分子鎖熱運動性が界面では抑制されることとよく対応した。さらに、分子鎖の引き伸しは、粗視化分子動力学シミュレーションの結果ともよく対応した。これまで得られた成果を総括することで、異種固体と接触した高分子のセグメント運動レベルにおけるダイナミクスを明らかにすることが出来た。
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