2009 Fiscal Year Annual Research Report
ガラス形成物質における非平衡緩和機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Creation of non-equilibrium soft matter physics: Structure and dynamics of mesoscopic systems |
Project/Area Number |
21015026
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
深尾 浩次 Ritsumeikan University, 理工学部, 教授 (50189908)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 健二 , 理工学部, 助教 (00511693)
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Keywords | エイジング / ガラス転移 / 非平衡緩和 / 記憶効果 / 誘電緩和測定 / 電気容量 / 揺動散逸定理 |
Research Abstract |
ガラス状態ではα過程は凍結されており、液体状態に特徴的な分子の移動度は観測されない。しかし、興味深いエイジング現象がガラス状態では観測される。ガラス状態にあるいくつかの高分子に対する電気容量測定により、特徴的なエイジング時間依存性が得られている。つまり、電気容量実部C'はエイジング時間とともに増大し、虚部C"は逆に減少する。これまでの研究により、電気容量の減少は、誘電感受率の減少に起因し、電気容量の増加は体積の収縮あるいは密度の増大に起因していることが示唆された。本研究では、この考察をさらに進め、等温エイジング過程での誘電感受率と体積の時間発展を定量的に分離することを試みた。以下、得られた結果を列挙する。 1)ポリ2-クロロスチレンの複素電気容量虚部の等温エイジング過程において、誘電感受率と体積変化を完全に分離することができた。 2)1)での知見をもとに、高分子ガラスのエイジング過程での誘電率と体積の時間変化、周波数依存性が簡単な理論的モデルにより再現された。 3)高周波数での電気容量実部C'が体積変化のみを捉えていることの実験的な証拠であるKovacs効果が実験的に再現された。T vs.1/C'グラフとで、液体状態から、液体状態のラインの延長線上でガラス状態のある温度T fまで、異なる熱履歴を通って到達する場合を考える。T fは液体状態のラインの延長線上にあるので、そこでの1/C'の値はすでに熱平衡値に達しており、これ以上の変化は起こらないことが期待される。しかし、実際はT fでの等温エイジング過程の時間経過とともに、1/C'が極大値を示した後、はじめの値に近づく現象が観測された。これはKovacsの体膨張測定での結果と一致しており、体積がエイジング過程で示す記憶効果の一種であると考えられる。以上の実験結果は高周波数での1/C'値の変化が体積の変化のみに起因していることの重要な根拠といえる。
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