Research Abstract |
マイクロ波の有機反応の分子メカニズムを解明するために,温度,出力制御ができるシングルモードマイクロ波装置を用い,さまざまな有機化合物について,温度上昇度を測定し,熱収支からマイクロ波反応のメカニズムの解明を検討した。この研究では,混合物としての種々の化合物の物性とマイクロ波効果の相関を見ることとする。混合物を観察することは,マイクロ波照射下の有機化学反応をモデル化することにもなり,コンピュータシミュレーション研究への種々のパラメータを提供することにつながる。具体的には,上昇温度から熱量を算出し,化合物の容量(体積),比誘電率,分子軌道法により算出した双極子モーメント,誘電損失係数,粘度係数等のパラメータとの関係を検証している。平成21年度は,一般的な有機分子を多種類選ぶとともに,イオン性液体などの有機分子を加え,熱量測定のデータを得た。次年度に継続してデータの検証と解析を進める。さらに,有機反応の分子メカニズムとして,酵素反応について検討した。医薬品など有用物質を生産する技術として酵素は,高い立体選択性や化学特異性などを実現することからグリーンケミストリーに見合った手段として期待されている。しかしながら,有機溶媒中で酵素を用いた場合,反応時間が極端に長くなるなどの問題がある。この問題解決のためにマイクロ波照射下での酵素反応を検討した。種々の酵素をマイクロ波照射下で試したところ,酵素活性があがったものや下がったものなど,様々な効果が示された。酵素活性が上がったリパーゼについて速度論解析を行なったところ,活性化エネルギーに差はなく,頻度因子を増大させる効果が見られた。また,蛋白質立体構造とマイクロ波効果の関連性を特徴的な二次構造のヘリックス構造の含有量について検証したが,相関性は見られなかった。
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