2009 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性-非磁性接合の非磁性層電子状態と伝導電子スピン状態ダイナミクスの実験的解明
Publicly Offered Research
Project Area | Creation and control of spin current |
Project/Area Number |
21019010
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
今田 真 Ritsumeikan University, 理工学部, 教授 (90240837)
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Keywords | 光電子分光 / バルク敏感性 / 電子状態 |
Research Abstract |
電子状態の解明を通してスピン流のメカニズムについての情報を得ることを目指して電子分光の手法を用いて実験研究を行った。まず、強磁性層に隣接する非磁性層のスピン偏極度の検出を光電子顕微分光を用いて行うことができるかどうかを検証した。非磁性でかつ磁性体との合金系でX線内殻磁気円二色性(MCD)がこれまでに観測されているPdに着目し、強磁性体との多層膜や、合金系においてPd 3p光吸収及びそのMCDを測定した。 しかしながら、そもそもPd 3p光吸収が酸素の1s光吸収にエネルギー的に極めて近いため、Pd 3p光吸収スペクトルを正しく測定することが困難であるうえ、光電子顕微鏡を用いることでさらに信号が弱くなった。このため、Pd 3p-XASMCDの検出にはまだ成功していない。一方、強磁性-非磁性界面での磁気的な状態の深さ依存性についての情報を得るために、内殻光電子スペクトル(XPS)の多重項構造に着目した。今年度はまずバルク電子状態を正しく観測するために、Fe単体およびその化合物における2pXPSの違いを、硬X線を光源として用いて測定した。その結果、Fe単体ではFe2p_<3/2>ピークの約0.9eV高エネルギー側にはっきりとした肩構造が観測された。一方、Feが非磁性状態にある化合物においては、Fe 2p_<3/2>ピークは幅が0.6eVで肩構造も見られなかった。このように内殻XPSは、磁性の強さについての情報を得るための有力な方法であることが分かった。
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