Research Abstract |
本研究課題は,室内灯で現象が起こり,フォトクロミック領域と非フォトクロミック領域からなるドメイン構造を有する単結晶フォトクロミズムを示す,我々が発見したある白金錯体に関して,その特異なフォトクロミズムの発現機構を明らかにすることを目的とした. 結晶化の過程の影響を調べるために行った超純水を用いて作製した単結晶においても,フォトクロミズムを発現し,ドメイン構造を呈することを明らかにした.また,元々の単結晶が結晶水を含む結晶であったが,再結晶を工夫し,無水塩の結晶を得ることに成功し,フォトクロミズムに伴う光誘起吸収帯を分光学的に測定した.その結果,無水塩の光誘起吸収帯は,その成長が早いが弱く,熱的に不安定ですぐに減衰してしまうことを明らかにした.このことにより,「結晶水の存在がフォトクロミック状態の安定化に大きく寄与している」ことを示すことができた.その他,分光学的には,フォトクロミズムを起こす光の波長,強度の依存性を調べた.その結果,短波長・高強度の励起光では,一旦成長した光誘起吸収帯が消滅してしまい,フォトクロミズムが再び起こらなくなる現象を見出した.このことから,フォトクロミックを起こす因子が付加的に土台となる単結晶に書き込まれた状況が生成している可能性があることが示された.また,着色種(青色種)の化学的解明の面では,電子スピン共鳴法により,微弱なスピンを持つ特殊な種であることが明らかとなり,合成的アプローチにより,青色種の候補となる白金錯体の別途合成に目途をつけることができた.
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