2010 Fiscal Year Annual Research Report
フォトクロミックチオフェノファン‐1‐エン類の開発
Publicly Offered Research
Project Area | New Horizons of Photochromism: Customized Molecular Design and Novel Applications |
Project/Area Number |
21021021
|
Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
竹下 道範 佐賀大学, 工学系研究科, 准教授 (40274534)
|
Keywords | フォトクロミズム / 立体選択的 / 光メモリー / 有機合成 / ソフトマテリアル / シクロファン / 光スイッチ |
Research Abstract |
本研究の目的は、新規なフォトクロミックチオフェノファン-1-エン類を開発し、今までのフォトクロミック化合物では見いだされなかった新たな特性を付与することである。平成22年度は以下の成果が得られた。(1)ジアステレオ特異的フォトクロミック化合物の開発、(2)溶液中での完全フォトクロミック反応を行う化合物の開発、(3)チオフェンとナフタレンなどの異なった芳香環をもったジアリールエテン類の開発、(4)大環状チオフェノファン-1-エン類の開発とそのフォトクロミズムの解明などである。(1)と(2)については以下詳細を示す。(1)チオフェノファン-1-エンに光学活性な架橋鎖を導入することによって、光学活性なチオフェノファン-1-エンをジアステレオ選択的に合成することに成功した。得られたチオフェノファンは単独エナンチオマー・ジアステレオマーで、100%ジアステレオ特異的にフォトクロミック反応を行うことが明らかとなった。これは、環反転、即ちジアステレオ異性化が起こらないシクロファン化合物特有の性質である。このことにより、光学分割をすることなしに、フォトクロミック反応の旋光度による非破壊読み出しが可能となった。(2)本研究の発表まで、溶液中で量子収率が1.0であるフォトクロミック反応は知られていなかった。本研究において見いだされた[2.2]メタシクロファン-1-エンは、光反応活性なコンフォメーションに固定されており、吸収した光子を全く無駄にすることなく、光反応に利用できる。また、最近報告された分子内水素結合等を用いた高量子収率なジアリールエテンとは異なり、外部環鏡に左右されることがない、完全フォトクロミック系であると言える。
|