2010 Fiscal Year Annual Research Report
寄生虫の宿主・媒介節足動物間における環境応答性トランジションの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Matrix of Infection Phenomena |
Project/Area Number |
21022004
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
嘉糠 洋陸 帯広畜産大学, 原虫病研究センター, 教授 (50342770)
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Keywords | 蚊 / 寄生虫 / 蠕虫 / 環境適応 / ストレス応答 / キナーゼ |
Research Abstract |
寄生虫感染症の多くは、終宿主以外の動物や自由生活世代を経るなど、その生活環において複数の発生ステージを持つ。その際、寄生虫は移行に伴う環境変化を刺激として、ステージの切り替え(トランジション)を行なっていると考えられる。寄生性線虫であるフィラリアの生活環は、媒介昆虫(蚊)と哺乳動物宿主の二つの動物ステージを経て完結する。この際、蚊-宿主間の移行に伴う温度変化の乗り越え(適応)システムを解明するため、犬フィラリア(Dirofilaria immitis)の第3期幼虫(L3)における脱皮機構をモデルとして解析した。C.elegansのJNKおよびp38は37℃環境下において迅速に活性化するのに対し、フィラリアでは両方とも低レベルの活性上昇に留まった。興味深いことに、フィラリアのJNKは第6エクソンの重複によりキナーゼドメインの一部が繰り返される構造を取っていることが明らかになった。この特徴的な遺伝子構浩は、他の寄生性糸条虫であるマレー糸状虫(Brugia malayi)およびロア糸状虫(Loa Loa)においても保存されていた。これらの結果から、フィラリアは温度変化を利用して乗り越えのみならず発育の切り替え(トランジション)を行っていると考えられる。
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