2009 Fiscal Year Annual Research Report
白血病ウイルス感染による病原性発現に関与する細胞性因子の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Matrix of Infection Phenomena |
Project/Area Number |
21022018
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
鈴木 健之 Kanazawa University, がん研究所, 教授 (30262075)
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Keywords | 感染 / レトロウイルス / 挿入変異 / 疾患モデルマウス / がん関連遺伝子 / 白血病 |
Research Abstract |
申請者は、レトロウイルスの感染によって白血病を発症するモデルマウスを用いて、ウイルス挿入の標的となる遺伝子群を網羅的に同定し、その機能や相互作用の解析を通して、病原性発現に関わる細胞性因子の探索を行っている。これまでの大規模解析から、高頻度に単離される標的として、ヒストンのメチル化酵素17種(Ezh2, Setd7, Smyd2など)と脱メチル化酵素11種(Fbxl10, Jmjd3, Jmjd2cなど)を同定した。メチル化、アセチル化、リン酸化などヒストンの翻訳後修飾は、転写制御、DNA複製、X染色体不活性化をはじめとする様々な生物学的現象に関与している。ヒトのがんでは、ヒストンのアセチル化酵素の変異や脱アセチル化酵素の発現異常が検出され、脱アセチル化酵素の阻害剤が既に抗がん剤として開発されている。これに対し、ヒストンのメチル化と発がんの関係は、解析がまだ進んでおらず、がんの新しい分子標的として、メチル化制御酵素は大変注目される。私たちは、同定したメチル化制御酵素について、ヒト肺がんにおける発現解析や、遺伝子発現に与える影響の網羅的な解析を進行している。 本年度は、食道がんで高発現が見られるJmjd2c脱メチル化酵素が、Mdm2がん遺伝子の発現上昇を誘導し、細胞内のp53がん抑制遺伝子産物の減少を引き起こすことを明らかにした。また最近、これらの酵素のなかに、ヒストンばかりでなく、p53などの転写制御因子や、NFkBやWntシグナル経路の因子に影響を与える酵素が複数存在することがわかった。すなわち、リン酸化などの翻訳後修飾と同様、メチル化が、普遍的にタンパク質の機能調節に重要である証拠と考えられる。さらに、特定の病原性ウイルスの増殖を阻害する可能性のある酵素も見つけており、宿主の免疫から逃れるウイルスの特性との関連や、治療の標的としての可能性を検討していきたい。
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Research Products
(5 results)