2009 Fiscal Year Annual Research Report
HIV感染抵抗性に関わる宿主因子の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Matrix of Infection Phenomena |
Project/Area Number |
21022024
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
塩田 達雄 Osaka University, 微生物病研究所, 教授 (00187329)
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Keywords | ウイルス / 遺伝子 |
Research Abstract |
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)はヒト及びチンパンジーにのみ感染し、カニクイザル(CM)などの旧世界ザルには感染しない。限られた宿主域により動物モデルを得られないことがAIDSの病態理解を困難なものとしている。この解決策としてHIV-1とサル免疫不全ウイルス(SIV)のキメラウイルスが構築されている。旧世界ザル細胞で複製し、かつ最もSIV由来の領域の少ないウイルスはカプシドタンパク質(CA)の4番目と5番目のヘリックス間のループ(L4/5)とVif遺伝子をSIVの相同配列に置換したものである。このウイルスはCMのT細胞株や末梢血単核細胞で複製可能であるが、感染したサルはAIDS発症には至らず、更なる改変が必要である。以前、我々はCMの抗HIV宿主因子TRIM5aによるHIV2型(HIV-2)の複製阻害が、CAの6番目と7番目のヘリックスの間のループ(L6/7)上の1アミノ酸で決まることを見出して報告した。そこで今年度は上記の知見に基づき、HIV-1のL6/7に新たな置換を導入して、より旧世界サル細胞での増殖能の向上したHIV-1の作製を目指した。その結果、CAのL4/5とVifに加え、L6/7全体をSIVの配列に置換したウイルスは、CMのT細胞株および同CD8除去末梢血単核細胞でより効率的な複製能を呈した。このことから、L4/5だけでなくL6/7もサル細胞での宿主因子による複製抑制に重要であることが示された。ウイルス粒子による旧世界サル細胞内のTRIM5a等阻害性宿主因子の飽和能について検討したところ、L4/5およびL6/7の両ループを置換した粒子は顕著に阻害性宿主因子に対する飽和能が低下していた。このことから、宿主因子との結合において両方のループが重要であることが示された。
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