2009 Fiscal Year Annual Research Report
細菌ゲノムに潜む宿主免疫回避生存戦略の研究
Publicly Offered Research
Project Area | Matrix of Infection Phenomena |
Project/Area Number |
21022026
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西野 邦彦 Osaka University, 産業科学研究所, 准教授 (30432438)
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Keywords | 感染症 / 免疫回避 / 薬剤耐性 / 病原性 / Toll-like receptor / 薬剤排出 / トランスポーター / 細菌 |
Research Abstract |
現在、臨床現場において様々な多剤耐性菌が出現し、耐性菌感染症は医療従事者が直面する重要な問題である。これまでに、細菌が保持する薬剤排出蛋白質遺伝子資源および、これらの制御ネットワークを、ゲノムワイドに包括的に解析し、耐性菌感染症克服のための基盤を構築してきた。最近になって、薬剤排出蛋白質は抗菌薬排出のみならず、病原性発現制御にも関与していることが分かってきた。このことから、薬剤排出蛋白質には、本来持ち備えている生理機能があると考えられる。本研究では、宿主免疫回避において、細菌ゲノムに潜む薬剤排出蛋白質がどのような役割を担っているのかを明らかにする。今年度は以下の内容を明らかにした。 サルモネラは、貧食されたマクロファージ、樹状細胞内で生存・増殖することができる宿主の殺菌機構を回避する種々の特徴を有している。宿主細胞はサイトカインの産生によりマクロファージを活性化して細胞内殺菌能を亢進させるなどして、細菌に対する防御を発揮する。サルモネラ薬剤排出蛋白質が、マクロファージのサイトカイン(TNF-α)産生におよぼす影響を調べたところ、薬剤排出蛋白質欠損株は野生株に比べTNF-α産生誘導能が高いことが分かった。この産生誘導は、排出蛋白質を発現させることで抑えられる。よって、細菌の薬剤排出蛋白質には宿主免疫から回避するための機能が備わっていることが考えられる。この産生誘導能の差はMyd88ノックアウトマウスから採取したマクロファージでは見られないことから、薬剤排出蛋白質による細菌の変化がToll-like receptorにより認識されていることが示唆された。
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Research Products
(41 results)