2009 Fiscal Year Annual Research Report
マラリアにおける免疫回避に関わる宿主寄生体相互作用の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Matrix of Infection Phenomena |
Project/Area Number |
21022036
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
久枝 一 Gunma University, 大学院・医学系研究科, 教授 (50243689)
|
Keywords | マラリア / 制御性T細胞 / 免疫回避 / 腸管寄生性蠕虫 / 病原性 |
Research Abstract |
申請者らはこれまでに致死性のネズミマラリア原虫が制御性T細胞を活性化することで宿主免疫を抑制し免疫回避を果たしていることを示してきた。感染前に制御性T細胞を除去することでマウスは防御免疫を獲得する。今年度は、外的要因によって制御性T細胞を活性化することで、制御性T細胞の活性化を起こさず宿主免疫に排除される弱毒のマラリア原虫の感染が受ける影響について検討した。マラリアの流行域には腸管寄生性蠕虫も分布し、両者の共感染は頻繁に起こっている。蠕虫は制御性T細胞を活性化することが知られており、マウス蠕虫の共感染のモデルを用いて解析した。 ネズミマラリア原虫Plasmodium yoelii 17XNL(PyNL)をマウスに感染させると、一過性に原虫の増殖が認められるものの、最終的には3週間ほどですべての原虫が排除される。ネズミ腸管寄生性線虫、Heligmosomoides polygyrus(Hp)を前もって感染させると、本来、PyNLは排除されすべてのマウスは生存するのに対して、これらのマウスでは速やかな原虫の増殖を認め、すべてのマウスが死に至った。共感染マウスでは、原虫抗原に対するT細胞の増殖・血清の抗体価が著しく減弱していたことから、Hpの共存により免疫抑制か起こっていることが示された。さらに、これらのマウスでは制御性T細胞が活性化されていることも見出した。これは致死感染株で見られる現象と同じであった。そこで、Hp感染マウスの制御性T細胞をPyNL感染前に除去した。すると、Hp感染によるマラリア原虫に対する免疫抑制は解除され、半数のマウスが生存するようになった。以上の結果から、Hpにより制御性T細胞が活性化されることで弱毒マラリア原虫が強毒化することが明らかとなった。申請者らが提唱してきた制御性T細胞の活性化による病原性の決定、をさらに支持する結果を得ることができた。
|