2010 Fiscal Year Annual Research Report
エンテロウイルスの神経トロピズムの研究
Publicly Offered Research
Project Area | Matrix of Infection Phenomena |
Project/Area Number |
21022053
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
小池 智 (財)東京都医学総合研究所, 東京都臨床医学総合研究所, 副参事研究員 (30195630)
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Keywords | ウイルス / 脳・神経 / トロピズム / インターフェロン / ウイルスレセプター |
Research Abstract |
ポリオウイルスやエンテロウイルス71(EV71)は中枢神経系で重篤な病変を引き起こすneurotropicなウイルスである。これらのウイルスの感染特異性の成立にはウイルスレセプターのようなウイルスの侵入過程やIFN応答のようなウイルスが細胞内に侵入した後の増殖過程の制御が重要な役割を果たしていると考えられている。 これまでEV71に関してはその受容体は同定されていなかったが、我々は昨年度Scavenger receptor B2がEV71の受容体として機能している分子であることを明らかにした。本年度はヒトSCARB2を発現するトランスジェニックマウスの作製を開始し、現在遺伝子を保有しているマウス系統が確認されており、そのマウスにおけるウイルス感受性の有無を確認する段階となっている。受容体トランスジェニックマウスはEV71病原性解明に大きく寄与すると考えられる。 ポリオウイルスが神経系と非神経系で大きく増殖効率が異なっている理由はポリオウイルス感染時のIFN応答の違いによって説明しうることを示してきた。その違いを生じさせる原因となっているのはウイルス感染を検知するセンサーではないかと仮定し、ポリオウイルス感染の検知に重要な働きをするセンサーはどれであるかをRIG-I, MDA5, TRIF, MyD88, TLR3ノックアウトマウスを用いて解析した。TRIF KOならびにTLR3 KOマウスでは非神経系組織でのウイルス増殖が著しく増加し、マウス個体の生存率も低下した。しかしながら神経系組織においてはウイルス増殖効率は野生型とほとんど同レベルであった。したがってポリオウイルスの感染の検知はTLR3に依存する経路が重要であり、その経路は主にウイルスが中枢神経系に到達する前の段階で有効に作用していることが明らかになった。
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