2010 Fiscal Year Annual Research Report
超分子モーターFoF1の1分子計算機実験
Publicly Offered Research
Project Area | Innovative nanoscience of supermolecular motor proteins working in biomembranes |
Project/Area Number |
21023019
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高野 光則 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40313168)
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Keywords | 回転分子モーター / エネルギー変換 / ATP / プロトンチャネル / 粗視化モデル / 分子動力学シミュレーション |
Research Abstract |
ATPはF1とFoの二つの回転モーターの協同的な働きによって合成されるが,それぞれのモーターの回転機構は十分に解明されていない。特にFoは不明な点が多いが,膜中の重要残基の静電(ボルン)エネルギーとcリングの回転ブラウン運動を必須要素に据えたモデルが今のところ有力視されている。このモデルの可否を調べるため,a-c複合体の全原子MD計算を行った。重要残基cGlu62をボルンエネルギー的に不利な状況におき,aサブユニットの動きを追った(cリングは空間に拘束)。200nsでは有意な動きは観測されなかったが,膜両側からcGlu62に通じる2本のプロトン半チャネル(これも上記モデルの必須要素)の存在が見えてきた。移動が見られなかった原因を探るためcリング単体(拘束なし)のMD計算を行ったところ,cリングの回転ブラウン運動を観測できた。aサブユニットの存在(および膜に面したcGlu62への水分子の出入り,脂質分子の種類の相違)がどう影響するかは今後の課題として残った。本研究で開発した粗視化ボルンエネルギー法の適用も同様である。F1については,βサブユニットの構造変化とβ-γ間の立体斥力が回転を駆動すると考えられてきたが,βと直に接する部分を失ったγ変異体も回転することから,従来と異なる回転機構の存在も示唆されていた。そこで,粗視化モデルを用いて計算機実験を行ったところ(α3β3複合体の協同的な構造変化を強制的かつ連続的に励起した),γ変異体の回転が観測された。β-γ間には静電引力が働いており,静電エネルギーの変化によってγに回転が生じたことが分かった。同じ粗視化モデルをリニアモーターであるKIF1Aに適用し,KIF1Aが微小管に結合する過程を観測したところ,KIFIAの微小管に沿った一方向的な動きにも静電相互作用が深く関与していること分かった。
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