2010 Fiscal Year Annual Research Report
花粉表層構造の形成機構とそのゲノム障壁における機能の研究
Publicly Offered Research
Project Area | Genome Barriers in Plant Reproduction |
Project/Area Number |
21024004
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石黒 澄衛 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 准教授 (50260039)
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Keywords | シロイヌナズナ / 花粉 / エキシン / ポレンコート / ステロール / タペート細胞 / 雄性不稔 / 分子遺伝学 |
Research Abstract |
雌しべの先端にある柱頭は、付着した花粉が同種植物のものか異種のものかを認識し、同種の花粉のみを発芽させることができる。これは花粉表層にある物質を柱頭が認識しているためである。このような種間認識に関わる物質が何であるかはまだよくわかっていないが、花粉表面を覆う「エキシン」や「ポレンコート」がその働きを担っていると考えられている。エキシンやポレンコートの形成機構にはまだ不明な点が多いので、その解明を目的としてシロイヌナズナを材料に研究を行った。 kaonashi4(kns4)突然変異体はエキシンが著しく薄くなる。電子顕微鏡観察から、エキシンの鋳型であるプライムエキシンの発達が悪いのがこの原因であることがわかった。また、プライムエキシンは減数分裂による小胞子の形成に先立って生合成が開始されることがわかった。kns4の原因遺伝子はガラクトース転移酵素をコードしていたことから、プライムエキシンはガラクトースを含む多糖であると推定された。 ポレンコートにはステロールエステルなどの脂質やタンパク質が多量に含まれている。ステロールを生合成できない突然変異体flaky pollen1(fkp1)の花粉は正常なポレンコートを形成できず、不稔になる。電子顕微鏡観察から、この変異体ではタペート細胞の脂質蓄積性オルガネラ、タペートソームとエライオプラストがいずれも正常に発達していないことがわかった。このことは、ステロールエステルを作るエライオプラストだけでなく、他の脂質やタンパク質成分を供給するタペートソームの発達にもステロールが重要であることを意味する。さらに、ポレンコート中には他の組織には見られない特殊な脂質が含まれることを見出し、この脂質の存在は花粉が正常な稔性を持つのに必須であることを明らかにした。
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