2009 Fiscal Year Annual Research Report
種内雑種を利用した対立遺伝子間の優劣に関わるDNAメチル化機構の研究
Publicly Offered Research
Project Area | Genome Barriers in Plant Reproduction |
Project/Area Number |
21024007
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
柴 博史 Nara Institute of Science and Technology, バイオサイエンス研究科, 助教 (20294283)
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Keywords | DNAメチル化 / 種内雑種 / 優劣性 / 対立遺伝子 |
Research Abstract |
筆者が進めてきた自家不和合性の花粉側S対立遺伝子間で見られる優劣性発現機構の研究により、ゲノムの新規メチル化というエピジェネティックな制御による優劣性決定機構の実態が明らかとなりつつある。こうした遺伝子発現制御が一般的な現象であることを示す為に、本研究課題では、エピゲノム解析技術を駆使して、シロイヌナズナ種内雑種におけるメチル化の実態とそれに係る遺伝子発現様態を比較統合解析することで、対立遺伝子間におけるDNAメチル化を介した片側対立遺伝子特異的な発現調節の実例を網羅的に探索した。平成21年度は、Col-0株、C24株およびF_1雑種の実生からpolyA RNAを抽出し、次世代シークエンサーでその遺伝子発現パターンを網羅的に解析した。その結果、Col-0株で21453遺伝子、C24株で21616遺伝子、F_1雑種で22288遺伝子が発現している事が示された。その中でCol-0株あるいはC24株で特異的な発現を示す遺伝子は、全発現遺伝子の約4%を占め(Col-0株で726遺伝子、C24株で889遺伝子)、それ以外は共に発現していた。一方、F_1雑種の発現は、97.6%(21754遺伝子)がCol-0株もしくはC24株の両方あるいはいずれか一方で発現が見られたが、2.6%(534遺伝子)の遺伝子がF1雑種で特異的に発現していた。また93遺伝子についてはCol-0株もしくはC24株で発現が見られたものの、F_1雑種では発現が見られなかった。 DNAメチル化の有無が、遺伝子発現に影響する事例がどれ位あるかを調べるために、維持型メチル化酵素MET1をコードする遺伝子を欠損した変異株(met1変異株;Col-0株由来)の実生で発現する遺伝子を調べ、野生型との異同を見た。その結果、met1だ変異株では21644遺伝子で発現が見られ、そのうちトランスポゾン様配列を除く902遺伝子がmet1変異株で、711遺伝子がCol-0株で特異的に発現していた。この結果を基にCol-0株あるいはC24株で特異的な発現を示す遺伝子の中で、DNAメチル化が影響する可能性がある遺伝子を探索したところ、Col-0株特異的発現遺伝子の44.1%(320遺伝子)、C24株特異的発現遺伝子の40.8%(363遺伝子)が野生株とmet1変異株間で発現に違いが見られた遺伝子と一致した。
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