2009 Fiscal Year Annual Research Report
匂い・フェロモン環境に応じたセルセンサー機能の変化と個体適応
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular interaction and modal shift of cellular sensors |
Project/Area Number |
21026021
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
椛 秀人 Kochi University, 教育研究部・医療学系, 教授 (50136371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥谷 文乃 高知大学, 教育研究部医療学系, 准教授 (10194490)
村田 芳博 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (40377031)
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Keywords | 匂い / フェロモン / 妊娠阻止 / ホルミルペプチド / ミトコンドリア / 鋤鼻器 |
Research Abstract |
本研究の目的は、嗅覚系が匂い・フェロモン環境を感知し、発達期あるいは交尾といった出来事を境にセンシング機構をどのように変化(モーダルシフト)させ、個体適応へと導くのかを明らかにすることであった。Balb/c雌マウスをBalb/c雄との交尾の翌日から2日間、CBA雄の尿中フェロモンに曝露させると、流産が惹起されるが、交尾相手の雄フェロモンに曝露されても流産は起こらない(ブルース効果)。この妊娠の維持は、雌マウスが交尾を引き金として交配雄のフェロモンを鋤鼻系の働きで認識・記憶し、この認識・記憶により発情促進作用を有する交配雄フェロモンシグナルの伝達を選択に抑制することによると考えられている。われわれは、このフェロモン候補としてミトコンドリア由来ペプチドに着目した。その理由は、ミトコンドリアのNADH dehydrogenaseのN末端から9つのアミノ酸残基からなるホルミルペプチド(ND1)は、N末端から6番目のアミノ酸がBALB/cマウスではトレオニン(ND1-6T)で、CBAマウスではイソロイシン(ND1-6I)というようにマウスの系統により異なるからである。このアミノ酸残基の違いが鋤鼻系で識別されるか否かをブルース効果の文脈で検討した。Balb/c雄と交尾したBalb/c雌の口鼻溝に交尾の翌日と翌々目に合計8回、50μMのCBA由来ND1-6Iを3μl滴下したところ、有意に高い妊娠阻止率が得られた。一方、Balb/c由来ND1-6Tを滴下しても低い妊娠阻止率しか得られなかった。この結果は、ND1によって雄尿の作用が再現されるということであり、体臭の一部として分泌されるミトコンドリアのペプチドがマウスにおける系統(個体)認識の手がかりとなることを示唆している。
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