2009 Fiscal Year Annual Research Report
単一細胞レベルの遺伝子発現プロファイルに基づく多能性獲得機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | The germline: its developmental cycle and epigenome network |
Project/Area Number |
21028010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柊 卓志 Kyoto University, 物質-細胞統合システム拠点, 特定拠点教授 (00512477)
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Keywords | 細胞分化 / 発生生物学 / 哺乳類生物学 / 細胞生物学 |
Research Abstract |
本研究は、マウス初期胚から個々の胚細胞ごとにcDNAを増幅、精密度の高い遺伝子発現プロファイルを構築し、多能性細胞を生み出す初期発生のメカニズムを分子レベルで解明することを目指している。当該年度は、胚細胞からのcDNA増幅と遺伝子発現解析をおこなった。具体的にはマウス胎生4.5、3.5、3.25日胚の内部細胞塊から新規単一細胞cDNA増幅技術によりcDNAを増幅し、定量的PCRにより、初期マーカーを含む約70種類の遺伝子についてその発現を調べた。解析の結果、以下の2点が明らかになった。(1)胎生4.5日では胚盤葉上層マーカー遺伝子群と初期内胚葉マーカー遺伝子群が互いに排他的な発現を示し、報告されているように、この時期には2つの細胞系統が確立されていることが分子レベルでも確認できた。しかし時間を遡るにつれ相互排他的発現を示す細胞および遺伝子の数は減少し、この2系統の境界があいまいになり、胎生3.25日胚ではこれら細胞系統を定義することが困難となった。(2)内部細胞塊の各遺伝子発現レベルは非常に多様であり、ほぼ全ての細胞で同程度の発現を示す遺伝子(e.g.beta-catenin)、高発現細胞群と低発現細胞群に分けることができる遺伝子(e.g.Hes1)、細胞間での発現のばらつきが大きい遺伝子(e.g.Foxh1)が存在する。これらの結果から、初期胚において多能性細胞を生み出す細胞系統の確立は、各細胞での偶発的な遺伝子発現から特異的な発現へのプロセスが存在することが示唆された。今後さらに網羅的な遺伝子発現情報の収集と統計学的解析のため、マイクロアレイを予定しており、現在までにサンプルの調整が完了し、解析のための手続きをすすめている。
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