Research Abstract |
卵成熟過程における卵丘細胞のERK1/2系を活性化させるEGF like factorに着目し,EGF like factorの一種であるamphiregulin (AREG)が,p38MAP kinaseやPKA依存的に発現することを見いだした.さらに,AREGはADAM17に修飾され活性型となるが,このADAM17の発現にプロジェステロンが関与していることを初めて明らかとした。卵丘細胞のERK1/2系は,卵の減数分裂を促進し,これをneuregulin1によるPKB系が抑制すること,この両者のバランスにより発生能を伴った卵の成熟が起こることも明らかとした.このneuregulin1は,sphingosineをsphigosine 1 phosphate (S1P)に変換するSPHK1の発現を正に制御し,S1Pが卵に作用して,cAMP濃度上昇を介して,卵の減数分裂を遅延させている可能性も示された.以上の結果から,AREGによるERK1/2が卵の減数分裂を正に制御し,neuregulin1によるPKB系が,S1P産生を介して負に制御する仕組みが示された.この成果は,ブタ卵における新たな体外成熟培養法の開発につながり,時期特異的に両者を添加する培養系により,体外受精後の胚盤胞期胚への発生率が有意に向上したことから,今後,様々な種への応用を目指していく計画である.
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