Research Abstract |
体細胞核移植卵の発生能は,核移植時にヒストン蛋白質のアセチル化を修整する処理(TSA処理)や初期化に関与するタンパク質(TCTP)の導入等を行うことで,多少改善されるが,劇的な向上には結びつかず,正常産子生産率は依然として数パーセント程度である。そのため,体細胞核を正しく初期化させて正常に発生させるには,ピンポイントの救済術では不十分である可能性があると考えられる。 本研究では,体細胞全体,あるいは卵全体の潜在的な生命力を高めることを期待して,天然物を用いた初期化促進法の開発,ならびに,天然物による胚の質の改善と向上を試みた。本年度は下記を中心に実施した。 前年度に引き続き,受精卵を用いて初期化を促進する天然物ならびに胚の質を改善する天然物の探索を行った。また,前年度までの結果から効果が見られた天然物数種類を用いて,受精卵の体内発生能の検討ならびに,核移植卵の発生能に及ぼす影響を検討した。核移植法は,当研究室の常法(Cloning and stem Cells., 10,133,2008.など)に従い,それぞれの天然物添加培地を用いて培養した。そして,受精卵,核移植卵のいずれも,胚盤胞への発生能とそれらを受胚雌へ移植後の妊娠中期の胎子,あるいは,正常産子への発生能を検討した。核移植卵においては,胚盤胞への発生能に対照区と大差がみられなかった。受胚雌へ移植後の体内発生能も,受精卵,核移植卵いずれにおいても,劇的な向上はみられなかった。
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