2010 Fiscal Year Annual Research Report
台頭する中産階級とその政治的・社会的インパクト:中印露比較研究
Publicly Offered Research
Project Area | Comparative Research on Major Regional Powers in Eurasia |
Project/Area Number |
21101502
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
園田 茂人 東京大学, 大学院・情報学環, 教授 (10206683)
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Keywords | 中国 / ロシア / インド / 比較研究 / 中産階級 / アジア・バロメーター / 不平等意識 / 政治的・社会的インパクト |
Research Abstract |
本研究は、ユーラシアの地域大国である中国、インド、ロシアの中産階級を対象に、その台頭がもたらす政治的・社会的インパクトを明らかにすることを目的としている。従来、中産階級研究を担ってきた政治学や社会学は、これらの国での研究に特化する傾向があり、リサーチ・クエスチョンも各地でバラバラだった。そこで本研究では、アジア・バロメーター2008などのデータベースを用い、共通の比較の枠組みを作りながら、調査の知見を首尾よく解釈するための作業を行ってきた。 2年計画の最終年度に当たる今年度は、昨年度にできた論文をいくかの国際学会で報告するとともに、特に中露に限定した場合の中産階級の台頭とその政治的インプリケーションに関してインテンシブな研究を行った。その成果は2011年3月14日(月)に実施された"Emerging Middle Classes and Their Impact on Political Change : A Comparison between Russia and China"で明らかにされた。 Natalia Firsovaは、ロシアの中産階級内部で政治的態度をめぐる大きな亀裂が存在しており、中産階級が一枚岩でないために大きな政治アクターとはなりにくいことを、李春玲は、中国の中産階級はその既得権益ゆえに政治的に保守的で、批判的な勢力となりうる可能性はあるとはいえ、その主張も激烈なものとはなりえないだろうとした。上海とサンクトペテルブルグのデータを比較した朱妍は、中国の中産階級の方が改革をより肯定的に捉え、とりわけ高度な専門職に就く者の間で中露の違いが顕著に見られるとし、園田は、アジア・バロメーターのデータを用いて、中国よりもロシアの方で選挙への積極的参加が見られるために、逆に政治制度に対する信頼が低下するパラドクスが見られる点を指摘した。これらの結果は『アジア時報』に掲載される予定となっており、それ以外の研究成果のとりまとめについては完了しており、報告書が刊行されている。
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Research Products
(5 results)