2010 Fiscal Year Annual Research Report
民族紛争における地域大国の役割に関する比較研究
Publicly Offered Research
Project Area | Comparative Research on Major Regional Powers in Eurasia |
Project/Area Number |
21101504
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
月村 太郎 同志社大学, 政策学部, 教授 (70163780)
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Keywords | 民族紛争 / 地域大国 |
Research Abstract |
昨年度の研究では、地域大国と民族紛争とが関わる2つのケースを想定し、そのうちで地域大国が国外の民族紛争に関係する場合について、3点にわたって暫定的な知見・理解を得た。今年度はヨーロッパ南東部のバルカン地域の民族紛争に対するEU(地域大国)の関わり方を主に研究し、以下の知見・理解を得た。 1.EUのバルカン地域におけるプレゼンスは、地域機構としてのみならず、「ヨーロッパ性」の象徴として機能している。歴史的にヨーロッパとアジア(オスマン帝国)との境界域(interface)に位置づけられてきたバルカン地域はユニークな多様性を有する政治・社会・文化を育んできたが、第一次世界大戦後に始まったアジアの撤退に伴ってそうした特性を失いつつあり、EUの東方進出過程終了の暁には、単なる辺境(periphery)とならざるを得ない。 2.ヨーロッパがバルカン地域の民族紛争の解決に関わったケースは、ボスニアとコソヴォである。前者では様々な調停に失敗し、結局は国連とNATOによる空爆によって、後者ではNATO単独の空爆によって民族紛争が終了したが、そこでの主たる役割は共に米国によるものであり、ヨーロッパのプレゼンスは低かった。 3.EUは同じくボスニアとコソヴォのケースにおいて、紛争後復興過程に携わっている。しかしその過程は必ずしも順調に進んではいない。ボスニアは1995年11月のデイトン合意によって国家が二分され、その「後遺症」に未だに悩んでいる。コソヴォは1999年の空爆後の国連暫定機構による統治を経て、2008年2月に独立したが、コソヴォ中央政府の実効支配が及んでいない北部の問題、ロシア、中国による国家非承認の問題が横たわっている。2.と同じく、いずれも地域大国としてのEUの限界を示しているものと考えることができる。
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