2009 Fiscal Year Annual Research Report
空間反転対称性のない重い電子系超伝導体における新奇現象の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Emergence of Heavy Electrons and Their Ordering |
Project/Area Number |
21102510
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤本 聡 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 准教授 (10263063)
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Keywords | 超伝導 / 空間反転対称性 / 上部臨界磁場 / スピン揺らぎ |
Research Abstract |
本年度は以下の研究を行った。(1)空間反転対称性のない重い電子系超伝導体CeRhSi3, CeIrSi3における新奇物性の解明のため、上部臨界磁場の詳細な解析を行った。以前の研究では、実験で観測されている、磁場がc軸に平行な場合の巨大な上部臨界磁場は低温で発達する量子磁気臨界揺らぎに起因することが示唆されていたが、磁場のスピン揺らぎへの影響や、スピン揺らぎ媒介による引力へのスピン軌道相互作用の効果が無視されていている点で不十分であった。本年度は、これらの点を改良した研究を行い、その結果、これらの効果を考慮しても、量子磁気臨界揺らぎの機構で実験事実をよく説明できることが明らかになった。これらの結果から、CeRhSi3, CeIrSi3で実現している超伝導が反強磁性スピン揺らぎに起因することが確立された。また、磁場がc軸に垂直な場合の不均一超伝導状態の実現の可能性も半微視的な計算によって調べた。その結果、十分強い磁場では、Fulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov状態が実現する可能性があることが示された。(2)実験で観測されている強磁性超伝導体UCoGeの上部臨界磁場の特異な振る舞いを理解することを目的とする研究を行った。この系では、強磁性の容易軸に平行な磁場に対しては上部臨界磁場が非常に小さいにも関わらず、これに垂直に磁場を印可した場合には、巨大な上部臨界磁場が実現する。この振る舞いの起源はよく理解されていない。 我々は最近、理論的にその存在が指摘されている、強磁性スピン揺らぎの臨界点近傍における特異な繰り込みの効果を考慮した解析を行った。この効果は有効的に臨界点への距離を縮める効果をもたらす。また、磁場が強磁性揺らぎに及ぼす効果が重要であると考え、この点を考慮した計算を行った。解析の結果、容易軸に平行な磁場による強磁性揺らぎの抑制が、上述の実験事実を理解する上で重要であることが示唆された。
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