2010 Fiscal Year Annual Research Report
ミュオンスピン緩和法による重い電子系の研究
Publicly Offered Research
Project Area | Emergence of Heavy Electrons and Their Ordering |
Project/Area Number |
21102525
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
髭本 亘 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 先端基礎研究センター, 研究主幹 (90291103)
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Keywords | 重い電子系 / 希土類化合物 / 多極子秩序 / 異方的超伝導 |
Research Abstract |
重い電子系の諸問題、特に多極子の秩序と多極子ダイナミクス及び超伝導電子対の対称性のミュオンスピン回転、緩和法による実験的解明を目的とした研究を行っている。微視的な内部磁場測定手法であるμSR法は磁気多極子の検出に大きな威力を発揮し、高い感度と独自の時間窓で磁気揺らぎの検出が可能であり、この特性を活かした研究を行った。 PrIr_2Zn_<20>は最近見出された重い電子状態を持つ金属間化合物であり、希土類イオンであるPrが16個のZnで構成されるカゴに内包された構造を持つ。この物質では、多極子秩序が起こるものと考えられており、さらに0.05Kで超伝導を示す。我々は多極子秩序と超伝導状態についての詳細な理解を目指し、PrIr_2Zn_<20>におけるμSR実験を行った。2K以上では、常磁性であるにもかかわらず、ミュオンスピンの緩和が見られた。この緩和は0.02Kまで顕著な変化を示さず、磁気相転移や時間反転対称性の破れた超伝導などの状態は検出されていない。この結果は四極子の秩序状態と一致しており、磁気多極子の秩序は伴わないことが明らかになった。 SmIn_3は3段の逐次相転移があることが知られ、その転移の秩序変数が四極子である可能性がこれまで提唱されていたが、μSR実験では全秩序相において少なくとも内部磁場を伴う転移であることが確認され、全ての秩序相の主要な秩序変数は磁気多極子であり、スピン構造の逐次変化を持つことが示唆された。 またCeIrSi_3では圧力下のμSR実験を行い、圧力の増加とともに、反強磁性転移温度が減少し、やがて超伝導状態があらわれることを観測した。超伝導状態では磁性との共存が見られず、また超伝導状態での磁場侵入長を明らかにした。
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Research Products
(10 results)