2009 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ光駆動半導体超格子における光着衣電子・正孔系の多体問題
Publicly Offered Research
Project Area | Optical science of dynamically correlated electrons in semiconductors |
Project/Area Number |
21104504
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
日野 健一 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 教授 (90228742)
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Keywords | 励起子光物性 / 量子多体系 / 半導体超格子 / 非線形光学応答 / フロケ状態 |
Research Abstract |
本年度は、光着衣電子および光着衣励起子の擬エネルギー構造の解析を行った。 光着衣電子に関しては、R行列フロケ理論を適用することによって、光着衣電子単体の問題を多チャンネル散乱問題に帰着して、駆動レーザーの強さに依存しない統一的方法を確立した。光着衣電子状態の中でも最も特徴的な動的局在状態に着目し、この共鳴構造と安定性の解析を詳細に行った。通常の強束縛モデルによると、動的局在状態は非常に鋭く強い振動子強度を有し安定であると理解されている。この強度は、THz波が印加されていない対応するWannier-Stark ladder状態に匹敵するかそれ以上であると報告されている。その安定性を理解するため、多チャンネル散乱問題における遅延時間スペクトルを計算し、各擬エネルギーでの崩壊寿命を求めた。それによると、印加静電場の強さに依存するが、動的局在状態は不安定でることが分かった。例えば、静電場100kV/cmのみの場合、その寿命は数psecの程度で極めて安定であるが、さらに200kV/cm程度のTHz波を照射すると、100fsec程度に減少し不安定化する。その不安定化のメカニズムを詳細に検討し、擬エネルギーが縮退した複数のフロケ状態がponderomotive結合を介して相互作用し、ファノ型の崩壊(動的ファノ共鳴)を引き起こすからであることが分かった。 光着衣励起子に関しても同様な解析をし、動的ファノ共鳴により、動的局在下にある光着衣励起子は不安定化することが分かった。ただし、光着衣電子単体の場合と異なり、この場合、ponderomotive結合とクーロン結合の両者が大きい場合に特に重要になることが見出された。
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