2010 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ光駆動半導体超格子における光着衣電子・正孔系の多体問題
Publicly Offered Research
Project Area | Optical science of dynamically correlated electrons in semiconductors |
Project/Area Number |
21104504
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
日野 健一 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 教授 (90228742)
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Keywords | 励起子光物性 / 量子多体系 / 半導体超格子 / 非線形光学応答 / フロケ状態 / 動的ファノ共鳴 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に引き続き、光着衣電子および光着衣励起子の擬エネルギー構造の解析を行った。とりわけ、後者においては、Bloch周波数とTHz波周波数の比γに対する崩壊メカニズムの相違を理解することを目指した。 光着衣電子に関しては、R行列フロケ理論を適用することによって、光着衣電子単体の問題を多チャンネル散乱問題に帰着して、駆動レーザーの強さに依存しない統一的方法が確立されている(前年度研究成果)。これによると、光着衣電子状態は、THz波強度が大きくなるにつれて、フォトンサイドバンド間のac-Zenerトンネリングを介してより短寿命で崩壊することが見出された。特に、最も特徴的な動的局在状態では、擬エネルギーが縮退した複数のフロケ状態がponderomotive結合を介して相互作用し、ファノ型の崩壊(動的ファノ共鳴)を引き起こすことが分かった。 しかしながら、これらの崩壊寿命を示す有効状態密度(遅延時間スペクトル)の振る舞いは、上記の比γによって大きく異なることが新たに見出された。特に、γが整数と有理数とでは、フォトンサイドバンド間結合の強さの相違から、その振る舞いは全く異なる。さらに、結合が強いγが整数でも、γ=1の場合とγ>1を比較すると、前者のスペクトルは極めて複雑な共鳴構造を表すことが分かった。これは、γ=1の場合、フォトンサイドバンド間結合の強さが、光着衣電子のBloch運動量に依存して大きく異なるためであろうと推察している。また、γが有理数の場合でも、THz波強度に対して寿命が単調に減少する訳ではなく、振動的挙動を示すことも見出された。
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