2009 Fiscal Year Annual Research Report
素粒子・原子核・宇宙分野のための大規模線形計算手法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Research on the Emergence of Hierarchical Structure of Matter by Bridging Particle, Nuclear and Astrophysics in Computational Science |
Project/Area Number |
21105502
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
櫻井 鉄也 University of Tsukuba, 大学院・システム情報工学研究科, 教授 (60187086)
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Keywords | シミュレーション / 大規模線形計算 / 数値アルゴリズム / 並列固有値解法 / 基盤ソフトウェア |
Research Abstract |
本研究では、素粒子・原子核・宇宙分野で現れる大規模な線形方程式や固有値問題を対象として、各分野で現れる解くべき問題の性質に応じてKrylov部分空間の特性を活かしたアルゴリズムの開発を行い、分野をまたがって共通性の高い数理的手法の構築を目指す。 平成21年度は、とくにいくつかの具体的な計算手法に焦点を絞って集中的に解決を図った。具体的には、Block Krylov部分空間法を格子QCDにおける物理量計算において現れる複数右辺ベクトルをもつWilson-Dirack方程式に適用した。ブロックの増加とともに現れる不安定性の原因を解析し、安定化する新規のアルゴリズムを提案した。実用規模の大規模問題においてその性能を評価し、高い性能が得られることを確認した。また、all-to-all伝搬関数の計算の高速化のために、Krylov部分空間のシフト不変性を用いた並列性の高い固有値解法を開発した。さらに、この解法の効率を高めるために、方法内で用いられる数値積分の積分点配置とそれに対応した積分法を開発した。これにより、従来法と比べてとくに計算時間に大きな影響を与える最小固有値付近の固有値を求める時間を削減することが可能となった。 格子QCD計算を対象として開発した各種の計算法をより幅広い分野に適用するため、原子核分野で現れる殻模型計算の特徴に合わせて改良を行い、従来法では数値的な不安定性が問題となっていた計算において、高い効果が得られることが確認できた。従来法と比べてメモリーをより多く必要とするため、この問題を改善するための手法の検討を進めている。素粒子分野のために開発した手法が原子核分野でも高い性能を発揮することが示され、本プロジェクトの効果を実証するものである。
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