2010 Fiscal Year Annual Research Report
チャーモニウム原子核の可能性を探る
Publicly Offered Research
Project Area | Research on the Emergence of Hierarchical Structure of Matter by Bridging Particle, Nuclear and Astrophysics in Computational Science |
Project/Area Number |
21105504
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 勝一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教 (60332590)
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Keywords | 量子色力学 / 格子ゲージ理論 / ハドロン物理 / エキゾチック原子核 / ハドロン間相互作用 / カラーの閉じ込め |
Research Abstract |
前年度までに、クォークの真空偏極を無視したクェンチ近似の範囲内で、チャーモニウムが原子核に束縛されるための必要条件、「チャーモニウムと核子の間の相互作用がその相対距離に依らず常に引力的であること」を示す事ができていたが、今年度はさらに軽いクォーク(アップ、ダウン、ストレンジネス)の動的自由度を完全に取り入れ且つクォークの質量が物理点に近い、現実的な格子QCDフル計算を完遂した。QCDにおけるカラー・ファンデルワールス力が、相対距離1fm近傍で指数関数的に遮蔽される短距離力であり、カラーの閉じ込めに関連する非摂動論的効果が重要であることを格子QCDフル計算でも再確認できた。さらにチャーモニウムと核子の弾性散乱の散乱位相を数値的に求めるための新しい方法:空間方向にツイストされた周期境界条件の活用により、閾値近傍における散乱位相の計算に成功した。この閾値近傍での振る舞いから低エネルギーでの相互作用を記述する上で普遍的な量となる、散乱長と有効到達距離を求めることが可能となった。QCD第一原理計算によって、チャーモニウム-核子間のS波散乱長は0.3fm程度、有効到達距離は1.5fm程度であることが明らかとなった。これらの値からBrodskyらによってその存在が予測されてきた比較的軽い原子核にチャーモニウムが束縛したエキゾチック原子核の存在の理論的可能性がより強くなったことを指摘した。
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