2009 Fiscal Year Annual Research Report
格子QCDに基づくハイペロン相互作用と軽いグザイハイパー核の構造
Publicly Offered Research
Project Area | Research on the Emergence of Hierarchical Structure of Matter by Bridging Particle, Nuclear and Astrophysics in Computational Science |
Project/Area Number |
21105515
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
根村 英克 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 助教 (80391738)
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Keywords | ストレンジネス / 第一原理計算 / ハイパー核 / 量子色力学 / 格子QCD / 逆散乱問題 / 少数多体問題 / 確率論的変分法 |
Research Abstract |
中性子星の内部のような、高密度の原子核物質中では、ストレンジネスを持った粒子が安定に存在する可能性がこれまでに指摘されている。しかしながら、どのようなハイペロンがどのような割合で現れるかは、その基本となる相互作用がよくわかっていないために、明らかではない。また、通常核においても、三核子以上の系での多体力の詳細な性質は明らかではない。本研究では、ストレンジネスを含む一般化された核力の性質を、量子色力学に基づいた理論的解析手法の一つである格子QCD計算によって調べた。さまざまなハイペロン核子系の中でも、実験データが最も多く、その性質の理解が比較的進んでいるΛN相互作用の計算を行った。 PACS-CSグループによって生成された、2+1フレーバQCDのゲージ配位を利用し、比較的大きな空間体積(2.9fm)^3中での、ΛN系の低エネルギーの散乱状態の波動関数を格子QCDシミュレーションによって求めた。また、さらに大きな空間体積(4.4fm)^3中での、クエンチQCDによる計算もあわせて行った。クォーク質量はπ中間子質量に換算して約400MeV~700MeV程度での計算を行った。ΛN-ΛNの弾性散乱チャネルでの波動関数の振る舞いから、中心力ポテンシャル並びにテンソル力ポテンシャルを得ることに成功した。2+1フレーバQCDとクエンチQCD計算で定性的に一致する結果を得た。また、非常に短距離部分の斥力芯と、その外側に引力部分があるという、中間子交換模型などから得られるポテンシャルと定性的に似た振る舞いをしていることがわかった。ΛN-ΛNの対角成分に現れるテンソル力は、通常の核力の場合と比べて弱く、ΛN間にはπ中間子交換が寄与しないことと定性的によく対応する結果が得られた。 今後、他のハイペロンチャネルへの拡張、とりわけ非弾性チャネルを含む枠組みへの解析方法の拡張を進め、こうして得られた格子QCDポテンシャルのハイパー核構造計算への適用を進めていく予定である。
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