2010 Fiscal Year Annual Research Report
格子QCDに基づくハイペロン相互作用と軽いグザイハイパー核の構造
Publicly Offered Research
Project Area | Research on the Emergence of Hierarchical Structure of Matter by Bridging Particle, Nuclear and Astrophysics in Computational Science |
Project/Area Number |
21105515
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
根村 英克 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (80391738)
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Keywords | ストレンジネス / 第一原理計算 / ハイパー核 / 量子色力学 / 格子QCD / 逆散乱問題 / 少数多体問題 / 確率論的変分法 |
Research Abstract |
陽子や中性子など核子間に働く力(核力)をストレンジネスを含むように拡張したハイペロン力の理解は、中性子星の内部など高密度の原子核物質の性質を理解する上で欠かせない課題である。特に、観測されている中性子星の最大質量をハイペロン力に基づき、矛盾なく説明できるかどうかは、最近の大きな問題のひとつである。本研究では、ハイペロン力の性質を、量子色力学に基づく格子QCD計算からハイペロンポテンシャルを計算することによって調べた。さまざまなハイペロン核子系の中でも、実験データが比較的豊富で、その性質の理解が他のハイペロン核子系よりも進んでいるラムダ核子系に注目し、これと同じ量子数を持つ系のハイペロンポテンシャルを求めた。 PACS-CSグループによって生成された2+1フレーバQCDのゲージ配位を利用し、比較的大きな空間体積(2.9fm^3)中での南部-Bethe-Salpeter波動関数を計算した。時間相関を利用してマルチハドロン系のポテンシャルを効率よく計算するための新しい方法を用いることにより、ラムダ核子ポテンシャル、シグマ核子ポテンシャルを計算することに成功した。得られたポテンシャルを適当な関数形でフィットすることにより、散乱長・有効距離並びに散乱位相差を格子QCDシミュレーションの統計誤差を含めて評価することに成功した。ラムダ核子系の相互作用はスピン三重項・一重項のいずれでも引力的あるのに対し、アイソスピン(I=3/2)のシグマ核子系では、スピン三重項状態では斥力となり、スピン一重項状態では、引力となる結果が得られた。 今後は、非弾性チャネルを含む枠組みへの解析方法の拡張を進めていく予定である。
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