2009 Fiscal Year Annual Research Report
小腸壁における脂質吸収プロセスのモデリング
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Soft-Interface Science |
Project/Area Number |
21106504
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
野々村 美宗 Yamagata University, 大学院・理工学研究科, 准教授 (50451662)
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Keywords | 小腸 / 脂質 / 吸収 / 濡れ / フラクタル |
Research Abstract |
食物中の脂質は、胆汁酸ミセルに取り込まれ、小腸壁表面の細胞膜と融合・吸収される。しかし、脂質を可溶化した胆汁酸ミセル水溶液が小腸壁表面を濡れ広がり、膜融合する過程は、ほとんど明らかにされていない。本研究では、小腸壁で起こる界面現象と脂質吸収プロセスを理解するために、小腸表面の構造を模倣したモデルを構築する。小腸壁には、微絨毛、絨毛、ひだの三つの階層からなる凸凹が存在し、さらにその表面にはムコ多糖類のゲルで覆われている。そこで、フラクタル表面と呼ばれる超凸凹表面を有するゲル材料を調製し、その表面を水が濡れ広がるプロセスのダイナミクスを高速撮影技術を用いて解析した。さらに、小腸壁のような凸凹表面における濡れ現象を説明する理論を構築した。 アルキルケテンダイマーというワックスを融液から結晶化させると、大きな凸凹の中に小さな凸凹が存在するフラクタル構造が自発的に生成する。われわれはこの構造を転写した石膏を鋳型として、ゲルを調製した。ゲル凍結乾燥物の電子顕微鏡観察により、大きな凸凹の中にさらに小さな凸凹が存在し、階層性が存在することが確認された。 濡れ現象は表面エネルギーが表面張力という力の次元に読み替えられて議論されてきた。しかし、同現象をより深く理解するためには自由エネルギーの立場から考察することも重要である。我々は濡れ現象を自由エネルギーで記述することを試みた。その結果、熱力学的安定条件としてYoungの式が得られた。さらに、水の接触角は親水的な表面では表面積倍増因子rの増加とともにより大きく、疎水的な表面ではより小さくなることが示された。すなわち、フラクタル寒天ゲルを初めとする凸凹表面では凸凹によって表面の親水・疎水性が強調されることが示された。この自由エネルギーに基づくモデルは小腸表面における界面現象を理解する上でも有用である。
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