2009 Fiscal Year Annual Research Report
ソフト界面における動的構造解析法の確立と界面拡散現象解明への展開
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Soft-Interface Science |
Project/Area Number |
21106516
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田中 敬二 Kyushu University, 工学研究院, 教授 (20325509)
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Keywords | 高分子 / 界面 / 膨潤動力学 / Case II拡散 / 拡散係数 |
Research Abstract |
非溶媒と接触した高分子界面は濡れ性、選択透過性や生体適合性等といった機能性と密接に関連している。このため、非溶媒と接触した高分子鎖の凝集状態および熱運動特性の解明は重要である。これまでに中性子反射率(NR)測定に基づき、非溶媒中におけるポリメタクリル酸メチル(PMMA)薄膜の凝集構造について検討してきた。その結果、高分子は非溶媒中においてさえも膨潤することを明らかにしている。NR測定は薄膜の深さ方向における組成分布を精密に評価可能であるが、現状では、測定に数時間から数十時間を必要とする。一方、可視光を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)および光導波路(GWM)反射率測定は、精密さという観点ではNRに劣るが、測定に要する時間は数秒程度であるため、膜の凝集構造変化をin-situで追跡することが可能である。本年度は、メタノール中におけるPMMA膜の厚化挙動を追跡することで、高分子膜の膨潤挙動を明らかにすることを目的とした。PMMA中におけるメタノールの拡散挙動は、Fick則ではなくCase IIモデルで記述出来ることが知られている。このモデルでは、非溶媒で膨潤した領域とガラス相の境界に拡散フロントと呼ばれる層が形成され、一定の速度でガラス相側へ移動する。Case II拡散におけるメタノールの拡散係数(D)は、拡散フロントの進行速度(V)、メタノールの体積分率(φ)、膨潤層が形成される瞬間におけるメタノールの体積分率(φc)を用いて表される。厚膜領域において得られたDは文献値(D_<bulk>=2.0×10-14cm^2・s^<-1>)と同程度であった。一方、初期膜厚が70nm以下の薄膜領域では、2種類の7が観測された。速い成分(D_<fast>)は非溶媒界面近傍における拡散に対応するため、初期膜厚に依存せずほぼ一定であった。遅い成分(D_<slow>)は膜内部における拡散に対応し、初期膜厚とともに減少した。薄膜領域におけるD_<fast>もD_<bulk>より著しく小さかった。膜が薄くなると試料全体積に対する界面積が著しく増大することを考えると、上述の結果はPMMA薄膜へのメタノールの拡散は、基板界面の効果により抑制されたと推測できる。基板による分子鎖の束縛効果がメタノールの拡散に影響を与えるか検討するために、Au、AgおよびSiO_x基板を用いて実験を行った。D_<fast>、D_<slow>の値どちらもAu、Ag、SiO_x基板の順に小さくなった。この結果は、基板によるPMMA分子鎖の束縛の程度と対応している。従って、PMMA薄膜中へのメタノール分子の浸入は、基板界面における分子鎖の運動性が影響していると結論できる。
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