2010 Fiscal Year Annual Research Report
熱力学的手法による脂質二分子膜における揺らぎの検出
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
21107502
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山村 泰久 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 准教授 (80303337)
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Keywords | 揺らぎ / 脂質二分子膜 / 熱容量 / アルキル鎖 / 生体膜モデル系 |
Research Abstract |
脂質二分子膜で構成される生体膜における揺らぎを検出するため,リオトロピック液晶を中心とした擬生体膜モデル系の熱容量測定を行い,構成分子の種類と測定結果から得られる熱力学的諸量の統計力学的解析を行った. 前年度に引き続いて,断熱型熱容量測定装置の改良を行い,脂質-水系についての熱容量測定を進めた.これまで取り扱ってきたモノアシルグリセロール類と同じ長さの飽和アルキル鎖を有するモノステアリンを取り上げ,それを構成脂質分子とする脂質-水系の熱容量測定を新たに行った.得られた熱力学的諸量の解析を行い,脂質二分子膜内における脂質分子のアルキル鎖のコンフォメーション揺らぎの変化について検討を行った.ラメラ相におけるアルキル鎖のダイナミクスは,そのアルキル鎖の形状に依存し,特に不飽和アルキル鎖のトランス体については,他のシス体や飽和アルキル鎖とは異なるダイナミクスを示すことがわかった.これは実際の生体膜中の構成脂質分子のアルキル鎖の形状とそのダイナミクスとの関係を理解する上で重要な結果であるといえる.このほか,脂質二分子膜で構成され複雑な構造を持つ面状凝集体からなる立方対称相においても研究を進めた.また,多角的な視野から理解を深めるため,ラメラ相に近い層状構造を持つ中間相を発現するサーモトロピック液晶と取り上げ,その熱容量測定を行った.その結果,アルキル鎖や柔らかい自由度を有する官能基が生体膜や液晶等の中間相の形成に果たす役割について,熱力学的見地から理解することができた.
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