2009 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白質のレアな大振幅ゆらぎの理論解析:クラッキングの探索
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
21107512
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 彰二 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 准教授 (60304086)
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Keywords | 蛋白質 / シミュレーション / 大振幅ゆらぎ / クラッキング |
Research Abstract |
蛋白質のレアな大振幅構造変化を調べるために、リガンド結合に伴いドメイン間の構造変化を起こす10個以上の蛋白質について、その構造ゆらぎを、弾性ネットワークモデル、郷モデル、それらを原子レベルの計算で補ったマルチスケールモデルでそれぞれ調べた。リガンド非結合状態(アポ状態)では、これらすべてのモデルがそのゆらぎと構造変化の関係をうまく記述できるのに対して、リガンド結合状態(ポロ状態)では、弾性ネットワークモデルは精度が悪く、郷モデルはそれよりかなり精度がよいが限界はあり、原子レベルの計算で補ったマルチスケールの郷モデルが非常に精度よくゆらぎと構造変化を再現できることが分かった。これは、ホロ状態からのダイナミクスにおいてクラッキングが重要な働きをしていること、クラッキングの正しい記述には原子レベルの配列に依存したエネルギー情報が重要であることなどを示唆している。 また、癌抑制遺伝子p53の蛋白質のN末端部分NTDは、天然変性蛋白質であり、いくつかの転写関連蛋白質と結合してフォールディングする。新学術領域の他研究者との交流に刺激されて、我々はこの系の計算研究を行うことにした。まず、転写因子との結合部位13アミノ酸残基の結合前の状態を調べた。p53の原子モデルを陽な水分子溶媒中に構成し、レプリカ交換分子動力学シミュレーションを行った。各レプリカ300nsの大規模サンプリングの結果、ほぼ収束した結果が得られた。我々の計算では、このp53ペプチドは300Kの水溶液中で大部分変性しているが、確率0.4%程度αヘリックスをとることが観察された。今後、結合タンパク質との複合体の物性を調べ、典型的な天然変性蛋白質のターゲットとの結合の物理化学を明らかにする予定である。
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Research Products
(24 results)