2010 Fiscal Year Annual Research Report
一分子観察法による生体分子の並進拡散運動と分子内構造変化の相関の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
21107515
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 聡 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30283641)
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Keywords | タンパク質 / 一分子蛍光観察 / 並進拡散運動 / βラクトグロブリン |
Research Abstract |
本研究では、タンパク質が一分子レベルで溶液中を拡散する過程を直接観察し、タンパク質の流体力学的半径を計測する方法を開発すること、さらに、タンパク質の構造変化を同時観測することで分子内の構造変化と溶媒との衝突によって引き起こされる並進運動の関わりを計測することを目的とした。研究実施項目として、タンパク質の拡散運動を計測するために、セルの前後に取り付けたバルブをコントロールすることで溶液をセル中で完全に止める実験方法を確立した。次に、蛍光色素の位置の時間変化を確定し、位置の時間変化から拡散定数を求めるための方法を検討した。その結果、一般に行われている平均二乗変位の時間変化をプロットする方法よりも、拡散幅の分布関数をガウスフィットして幅を求め、その時間変化をプロットする方法の方がより正確な拡散定数を求められることを見いだした。以上の基礎データを積み重ねた後に、蛍光色素、蛍光ピース、βラクトグロブリンなどについて、一分子レベルでの拡散運動観察を行った。まず、蛍光色素単体と蛍光ビーズの拡散運動を観察したところ、それぞれに期待される分子量に応じた拡散運動の違いが確認された。次に、βラクトグロブリンを蛍光色素でラベルし、さまざまな変性状態において拡散運動を観察したところ、拡散運動を早く示す成分と遅く示す成分があり、それぞれ蛍光強度が異なることを見いだした。これは、一分子レベルで拡散運動を観察することで、試料の不均一性を見いだしたはじめての例である。
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