2009 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質における局所構造の揺らぎ
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
21107519
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
山口 真理子 Nara Institute of Science and Technology, 物質創成科学研究科, 助教 (50521738)
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Keywords | 生物物理 / タンパク質 / 燐光寿命 |
Research Abstract |
タンパク質が固有の機能を有するメカニズムを明らかにするには、タンパク質が内在する揺らぎを理解することが不可欠である。特に局所構造の揺らぎは基質認識や活性に重要であると考えられるため、局所構造の速い揺らぎに対する知見が望まれる。そこで、トリプトファンの燐光寿命を用いてトリプトファン周辺の局所構造の揺らぎを調べることを目的として本研究を実施した。本年度は測定系の構築を行い、トリプトファン残基を一つ有するスタフィロコッカルヌクレアーゼを用いて、タンパク質の構造変化と燐光寿命の関係を調べた。その結果、タンパク質を尿素によって変性させると燐光寿命が短くなることが分かった。これは、局所構造が壊れてトリプトファン残基がより溶媒に露出し、酸素による消光が起きやすくなっているためである。得られた寿命と酸素濃度からquenching rateを求めると、天然状態では7x10^8M^<-1>s^<-1>であるのに対し、変性状態では4x10^9M^<-1>s^<-1>であった。この6倍のquenching rateの違いは局所構造の変化、特に溶媒への露出度を表していると考えられる。一方で、天然状態と変性状態とでは局所構造の揺らぎも変化しているため、局所構造の揺らぎの違いがquenching rateの違いに寄与している可能性がある。そこで揺らぎの影響が少ない蛍光に対する酸素のquenching rateを求めた。その結果、蛍光に対するquenching rateは、タンパク質の立体構造には依存せず、測定した酸素濃度において酸素は蛍光の消光に寄与していないことが分かった。蛍光に対するquenching rateを求めるためには、より高い酸素濃度で測定する必要がある。
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