2010 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質における局所構造の揺らぎ
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
21107519
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
山口 真理子 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (50521738)
|
Keywords | 生物物理 / タンパク質 / 燐光寿命 |
Research Abstract |
タンパク質が固有の機能を有するメカニズムを明らかにするには、タンパク質が内在する揺らぎを理解することが不可欠である。特に局所構造の揺らぎは基質認識や活性に重要であると考えられるため、局所構造の速い揺らぎに対する知見が望まれる。そこで、トリプトファン(W)の燐光寿命を用いてW周辺の局所構造の揺らぎを調べることを目的として本研究を実施した。本年度は、Wとシステイン(C)の分子内接触による燐光寿命変化をプローブとしてW周辺の揺らぎを調べた。スタフィロコッカルヌクレアーゼ(SNase)の140番目W(W140)から3~20残基離れた部位にCを導入し、Cによる消光係数からWとCに挟まれたペプチド鎖の揺らぎを調べた。Cを導入していない野生型SNaseのW140では、5.6Mグアニジン塩酸塩(GdnHCl)存在下で約20μsの燐光寿命が観測された。一方Cを導入したSNaseでは消光により寿命が0.3~10μsに減少した。寿命変化から消光係数を求めると4x10^4~3x10^6s^<-1>であり、W-C間距離の減少に伴って消光係数は単調に増加した。このことから、W-C間のペプチド鎖はGdnHClとの相互作用によって柔軟性が増し、特定の構造を持たずに比較的自由に揺らいでいると考えられる。さらに配列依存性を検証するため、生理条件下においても天然構造をとらない変異体である139A140についても同様の実験を行った。139A140は構造形成に必要な相互作用を欠如しているため、野生型とは異なる揺らぎが観測されると期待されたが、5.6M GdnHCl存在下では野生型と139A140に差異は見られなかった。GdnHCl濃度を低くすることで、揺らぎに差異が現れると期待される。
|