2010 Fiscal Year Annual Research Report
生体環境に基づく人工揺らぎ反応場が酵素に与える影響
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
21107524
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
戸谷 希一郎 成蹊大学, 理工学部, 准教授 (80360593)
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Keywords | 揺らぎ / 酵素 / 糖鎖 / 分子クラウディング / 微小空間 / 細胞外マトリクス |
Research Abstract |
生体内は多様な生命分子が織りなす不均一な環境であり、酵素反応場は常に揺らぎの中に存在しているものと考えられる。また酵素自体の3次元構造も周辺環境の揺らぎに伴って動的に変化している可能性もある。本研究は酵素反応が生体内反応場に由来する揺らぎによって受ける影響を明らかにし、揺らぎを加味した酵素アッセイ法の確立を目的としている。そこで「分子濃度」「微小空間」「異常拡散」という3つの揺らぎ生む可能性のある要素を加味した反応場を構築し、その中で多様な酵素の活性・性状解析を行う。これにより生体内揺らぎの中で連続的に起こる酵素反応過程を分子レベルで理解することを目的としている。 本年度は、前述の3つの揺らぎヨウ素を加味した分子クラウディング反応場、リポソーム反応場、ヒアルロン酸反応場を構築し、それらの環境場における酵素反応解析を行った。対象酵素反応として生体内の糖鎖変換反応を選択し、糖鎖が複数の酵素によって連続的にプロセシングされる過程を解析したところ、分子クラウディング環境においては小胞体グルコシダーゼIIによるグルコース切断反応が加速すること、ならびにマンノシダーゼ群によるマンノース切断反応が減速することを見出した。一方、リポソーム反応場においてはマンノース切断反応が加速することが分かった。いずれの反応も速度論解析を行い、特殊反応場が酵素に与える影響を詳細に検討した。また、ヒアルロン酸反応場においては糖加水分解反応がヒアルロン酸の濃度によって加速・減速の双方向に調節されることが分かった。 以上の検討により、生体内では反応環境場に由来する揺らぎが生化学反応に有意の影響を与えていることが明らかとなった。
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Research Products
(23 results)