2009 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜の揺らぎによる薬物の輸送機構の動的多核NMR解析
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
21107527
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Research Institution | Himeji Dokkyo University |
Principal Investigator |
岡村 恵美子 Himeji Dokkyo University, 薬学部, 教授 (00160705)
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Keywords | 熱揺らぎ / ドラッグデリバリー / 脂質二分子膜 / パルス磁場勾配NMR / 拡散 / 生物物理 / 超精密計測 / 動態 |
Research Abstract |
本年度は、主に「熱揺らぎによるモデル膜への薬物輸送の動的多核NMR解析」を実施した。薬物として、抗がん剤・5-フルオロウラシル(5FU)を用いて、パルス磁場勾配NMR法による「薬物の結合量の"その場定量"」と「膜内の拡散運動の解析」、「薬物の結合と解離のkineticsの解析」を行った。熱揺らぎによるモデル膜への薬物の輸送を解析するための方法論の確立を目標とした。 5FUをそれぞれ水中から細胞モデル膜としてのリン脂質1枚膜リポソームに取り込ませた。膜に結合した(bound)成分と水中に残った(free)成分を、磁場勾配NMRで同時に計測した。シグナル強度の減衰に対して、bound, free 2状態間の交換を考慮したBloch方程式の解析解を求めて、5FUの「膜への結合と解離の速度定数」、「膜への結合量」ならびに「膜のなかの拡散係数」を決定した。 さらに、「生体膜の熱揺らぎによる薬物輸送」に関する予備的検討を行った。ヒトのHL60細胞に5FUを加え、薬物のNMRシグナルの変化を分単位の時間分解能で計測した。シグナル強度は時間とともに変化し、定量的な速度論へ展開可能であることが明らかとなった。細胞の生存率も良好であった。この結果は、今後、熱揺らぎによる薬物の細胞内輸送の速度論的なモデルを確立する前段階として、重要な知見であると考えられる。
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