2009 Fiscal Year Annual Research Report
高周期14族元素による特異なπ空間の創出と反応場の形成
Publicly Offered Research
Project Area | Emergence of highly elaborated pai-space and its function |
Project/Area Number |
21108502
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
関口 章 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 教授 (90143164)
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Keywords | ケイ素-ケイ素三重結合 / 高周期14族元素 / シジリン / π空間 / 非平面π結合 / 理論計算 |
Research Abstract |
ケイ素-ケイ素三重結合化合物ジシリンは特異なπ空間の創出と反応場を形成し、炭素アセチレンに見られない反応をすることを明らかにした。本研究では、三重結合ケイ素化合物ジシリンと有機小分子との反応を検討し、新たなπ電子系有機ケイ素化合物への変換反応の開発とこれら新物質の構造、物性の解明を行い、炭素π電子系に見られない反応性を明らかにした。ケイ素-ケイ素三重結合化合物ジシリンはトランスに折れ曲がったケイ素-ケイ素三重結合を持ち、π及びπ*軌道の縮退が解け、面外対称・面内非対称のπ及びπ*軌道を有し、炭素アセチレンとは異なる反応性を示すことが期待される。本年度は下記の研究成果を得た。 N-ヘテロ環カルベン(NHC)は、ジシリンのπ*軌道と相互作用し、NHCの強いσ供与性を利用して高周期元素低配位化学種を安定化できることを見出した。ジシリンとテトラメチルイミダゾール-2-イリデンとの反応は速やかに進行し、対応するジシリン-NHC 1:1錯体を生成した。付加体の中心のSi-Si結合長は2.192(2)Aであり、水素置換ジシレニドのSi=Si二重結合距離と同程度であった。また、DFT計算から、HoMo-1にSi2上の孤立電子対を含む軌道であることが明らかにした。一方、ジシリンとアルキンとの反応はジシリンのLUMO(面内非対称πin*軌道)における一方のspケイ素上の軌道と炭素-炭素π軌道と相互作用し、続く環拡大反応、第二のアルキン分子の環化付加、原子価異性により、1,2-ジシラベンゼンを与えることを明らかにした。また、ジシリンとトリメチルシリルシアニドとの反応を行うとジシリンービス(シリルイソシアニド)錯体ともに1,4-ジアザ-2,3-ジシラベンゼン類縁体が得られた。トリメチルシリルシアニドはトリメチルシリルイソシアニドとの平衡混合物として存在し、イソシアニド体が2つのspケイ素原子に配位することでジシリン-ビス(シリルイソシアニド)錯体が生成し、シリルシアニドとして窒素原子で2つのspケイ素原子に配位した後に環化することでジアザ-2,3-ジシラベンゼン類縁体が生成することを明らかにした。
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Research Products
(31 results)