2009 Fiscal Year Annual Research Report
光合成蛋白質における高次π空間による光誘起電子移動反応の分子制御機構
Publicly Offered Research
Project Area | Emergence of highly elaborated pai-space and its function |
Project/Area Number |
21108506
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
野口 巧 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 准教授 (60241246)
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Keywords | 光合成 / 光化学系II / 赤外分光 / π系共役色素 / 電子移動 |
Research Abstract |
1.植物の光化学系II(PSII)において第一キノン電子受容体Q_A及び第二キノン電子受容体Q_B間の電子移動経路を形成する非ヘム鉄について、その光誘起フーリエ変換赤外(FTIR)差スペクトル(Fe^<2+>/Fe^<3+>差スペクトル)を測定し、チロシン側鎖のQ_A-His-Fe^<2+>-His-Q_Bπ空間への構造的相互作用を調べた。チロシンに選択的に[4-^<13>C]Tyr同位体置換を施した試料を用いて、チロシン側鎖のCO伸縮及びCOH変角振動バンドを同定した。量子化学計算による解析により、このチロシン側鎖は炭酸水素イオンを介して非ヘム鉄に相互作用していることが示された。このチロシンの相互作用は、π空間を介してキノン分子に作用し、Q_A、Q_B間の電子移動を制御し、また水素結合ネットワークを通じてQ_Bへのプロトン移動に重要な役割を果たしていることが示された。 2.光化学系IIにおけるフェオフィチン第一電子受容体のFTIR差スペクトルを測定し、フェオフィチンの共役ケトC=O基の水素結合構造とその酸化還元電位との関係を調べた。共役ケトC=O基が水素結合しているD1蛋白質の130番目のアミノ酸がグルタミンである試料(ホウレンソウのPSII及びシアノバクテリアThermosynechococcus elongatusのPSII-PsbA3)及び、それがグルタミン酸である試料(T.elongatusのPSII-PsbA1)のスペクトルから、水素結合強度の違いは、フェオフィチンラジカルアニオンの構造により大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。フェオフィチンの水素結合複合体の密度汎関数法計算から、中性フェオフィチン及びフェオフィチンアニオンへの水素結合効果の違いによって、フェオフィチンの酸化還元電位が変化することが示された。シアノバクテリアはこのメカニズムを用いて第一電子受容体フェオフィチンの酸化還元電位を制御し、電荷再結合経路およびその速度を変化させて光化学系IIの光保護を行っていることが示された。
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Research Products
(19 results)