Research Abstract |
今年度は,2-(1-ナフチル)-2-フェニルおよび2-(2-ナフチル)-2-フェニルメチレンシクロプロパン(1b,1c)の熱ルミネッセンスと「有機ラジカルEL」の検討を行った. 基質1の低温マトリクスを調製し,γ線照射と昇温融解をしたところ,1bの場合には発光極大λ_<TL>=479,516,555nmを持つ青緑色のTLが,1cの場合にはλ_<TL>=603,656nmを持つ赤色のTLが観測された.これらの発光種はそれぞれ^32b^<・・*>と^32c^<・・*>であり,ナフチル基の置換位置のみが異なるだけで100nm以上も発光波長が異なる点は興味深い.その原因について知見を得るため,^32^<・・*>の前駆体である2^<・+>の吸収波長を調べたところ,2b^<・+>の吸収極大波長はλ_<AB>=379,553nmに,2c^<・+>のそれはλ_<AB>=453,553nmであった.両者の間で長波長側の吸収はほぼ同じであるが,短波長側のそれは大きく異なっている.^32^<・・*>の発光と2c^+の吸収の類似性は,一見,同じ軌道が関与するためと思われたが,密度汎関数理論計算による検討の結果,そうではないことがわかった.なお,これらの発光や吸収は部分骨格である1,1-ジアリールエチルラジカルや1,1-ジアリールエチルカチオンのそれらとよく対応していた.以上の結果から2^<・+>,^32^<・・*>,^32^<・・>のいずれにおいてもねじれ型分子構造と分離型電子構造を取っていることがわかった. また,1cの「有機ラジカルEL」素子の試作し,TLとよく似た発光λ_<EL>=617,650nmを観測した.この結果は,低温マトリクス中でγ線照射をしなくとも,室温のデバイス中で電圧印加をすれば^32c^<・・*>が容易に発生し,これが「有機ラジカルEL」の発光子として働くことを示す.今後,1bでも同様な実験を行い,「有機ラジカルEL」の特性を評価する.
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