2010 Fiscal Year Annual Research Report
海底下の有機化合物バイオマーカーの炭素・水素同位体組成と生物活動
Publicly Offered Research
Project Area | Project TAIGA: Trans-crustal Advection and In-situ biogeochemical processes of Global sub-seafloor Aquifer |
Project/Area Number |
21109503
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
奈良岡 浩 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (20198386)
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Keywords | 伊是名熱水域 / コア堆積物 / 脂質バイオマーカー / ホパノイド / 脂肪酸 / ガスクロマトグラフ燃焼同位体比質量分析計 / 炭素同位体比 / 化学合成バクテリア |
Research Abstract |
当初の予定通り、「海底下の大河」プロジェクトで実施された沖縄トラフの伊是名熱水域における研究航海(KT-10-23)に参加し、海底表層ピストンコア堆積物の脂質バイオマーカーの同位体組成研究を行った。試料は泥質堆積物で、表層から深度135cmまでの6つの深度について分析し、有機炭素量は最大1.9%まで含まれていた。炭化水素画分ではジノルポパンとジプロプテンなどの3つのC_<30>ホペンが多く検出されたのに対して、n-アルカンなどの飽和直鎖炭化水素は全く検出されなかった。また、これらホパノイドの炭素同位体比をガスクロマトグラフ燃焼同位体比質量分析計によって測定したところ、-49~-45%。に分布し、主に化学合成バクテリア起源であることがわかった。さらに、脂肪酸画分ではC_<16>飽和脂肪酸やC_<32>ホパン酸が存在した。一方で、アルコール画分をヨウ化水素酸で分解したものについては、C_<40>イソプレノイド炭化水素などは検出されず、グリセロールジアルキルグリセロールテトラエーテル(GDGTs)やアーキオールなどのイソプレノイドエーテル脂質は存在せず、古細菌からの寄与はほとんどないことがわかった。これらの結果は伊是名熱水域の表層においては化学合成バクテリアが主に基礎生物活動を担っていることを示す。航海中に堆積物コアの間隙水で測定された硫酸塩やアンモニアの濃度が高かったことから、硫酸イオンやアンモニアイオンを使って代謝を行うバクテリア(アンモニア酸化細菌や硫酸還元菌)が重要な役割を果たしていると考えられる。
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