2009 Fiscal Year Annual Research Report
高圧STMで探る分子性導体の多様な電子相
Publicly Offered Research
Project Area | New Frontier in Materials Science Opened by Molecular Degrees of Freedom |
Project/Area Number |
21110501
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
市村 晃一 Hokkaido University, 大学院・工学研究科, 准教授 (50261277)
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / トンネル分光 / 分子性固体 / 強相関電子系 / 低温物性 / 圧力効果 |
Research Abstract |
本研究は、高圧力下で動作する走査トンネル顕微鏡(STM)を新規に開発し、これを用いて分子性導体の基底状態を調べることを目的としている。 1.高圧STMのための装置開発 ヘリウムガスを用いてボンベ圧(~10MPa)から増圧し100MPaまで加圧可能なヘリウムガス圧発生装置を整備した。これに接続するSTM用圧力セルを新規に製作し室温で100MPaまでの加圧試験を行った。この高圧セル内に、小型のシェアピエゾによる粗動用アクチュエーターおよび探針走査用のチュープスキャナーなどからなるSTMヘッドを組み込み常圧下でのSTMの動作を確認した。 2.分子性導体の単結晶試料作成 分子性導体α-(BEDT-TTF)_2KHg(SCN)_4の低温での密度波状態に着目し、電解法を用いて、この試料の単結晶を作成した。原料試薬を再結晶精製することにより良質の単結晶が得られた。 3.単結晶試料の常圧下での基底状態 得られたα-(BEDT-TTF)_2KHg(SCN)_4単結晶試料の常圧下での電子物性を調べるために、電気抵抗率と磁化率の温度依存性を測定した。直流4端子法による電気抵抗率は、低温で緩やかな増大を示し、この試料の密度波転移温度が8Kであることがわかった。SQUID磁束計による磁化率測定では、サンプルホルダーを改良することにより1mg以下の微量試料の磁化率を精密に測定することができた。その結果、従来は高温側から発達する大きなキュリー常磁性成分に隠れていた、密度波転移に伴う磁化率異常を明確に観測できた。キュリー常磁性成分を差し引く解析により、磁化率は密度波転移温度以下で緩やかに増加する弱強磁性の振る舞いを示すことがわかった。このことは、常圧での基底状態が、単純な電荷密度波(CDW)やスピン密度波(SDW)ではなくOCDWとSDWの共存状態であることを示唆する。
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