2010 Fiscal Year Annual Research Report
高圧STMで探る分子性導体の多様な電子相
Publicly Offered Research
Project Area | New Frontier in Materials Science Opened by Molecular Degrees of Freedom |
Project/Area Number |
21110501
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
市村 晃一 北海道大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (50261277)
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / トンネル分光 / 分子性固体 / 強相関電子系 / 低温物性 / 圧力効果 |
Research Abstract |
本研究は、高圧力下で動作する走査トンネル顕微鏡(STM)を用いて、分子性導体の新しい基底状態を調べることを目的とした。分子性導体α-(BEDT-TTF)2KHg(SCN)4の密度波状態を対象として研究を行い、密度波の共存・混合状態という新規基底状態が実現していることが明らかになった。 1.高圧STMの整備 STM専用高圧セル内に、小型シェアピエゾによる粗動用アクチュエーターおよびチューブスキャナーなどからなるSTMヘッドを組み込み、常圧下でのSTM動作を確認した。ヘリウムガス圧発生装置により加圧した。 2.分子性導体の単結晶試料作成と評価 分子性導体α-(BEDT-TTF)2KHg(SCN)4の単結晶試料を電解法を用いて作成した。原料試薬を再結晶精製することにより良質の単結晶が得られた。単結晶試料の結晶構造はX線回折により確かめられた。 3.α-(BEDT-TTF)2KHg(SCN)4の新規基底状態 α-(BEDT-TTF)2KHg(SCN)4単結晶試料の常圧下での磁気的特性を詳細に調べた。SQUID磁束計を用いて、微量試料での磁化率の温度依存を精密に測定した。その結果、密度波転移に伴う磁化率異常を新たに観測できた。本質的な磁化率は密度波転移温度の8K以下で緩やかに増加することがわかった。また、4KでのSTM測定から、不整合電荷密度波と整合と思われる電荷変調が観測された。これらの結果を受け、CDWとSDWの共存・混合状態という新しい基底状態のモデルを提唱した。この系では、CDWをもたらす電子格子相互作用とSDWをもたらすオンサイトクーロン相互作用が同程度であることから、CDWとSDWの共存・混合状態という新規基底状態が実現しているものと考えられる。
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Research Products
(21 results)