2010 Fiscal Year Annual Research Report
超分子ローター構造を利用した物性開拓
Publicly Offered Research
Project Area | New Frontier in Materials Science Opened by Molecular Degrees of Freedom |
Project/Area Number |
21110503
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
芥川 智行 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (60271631)
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Keywords | 分子性結晶 / 強誘電体 / 分子モーター / 超分子 / 導電性 / 金属錯体 / クラウンエーテル / 分子機械 |
Research Abstract |
分子性結晶内に、分子の揺らぎや回転の自由度を導入したシステムは、結晶格子の柔らかさを利用した新規な物性開拓の場を提供する。本研究では、1R,2R-cyclohexanediammonium(CHDA^<2+>)-(crown ethers)_2カチオン構造中のCHDA^<2+>の振り子運動及びp-cyanomethylanilinium(CMAni^+)-[18]crown-6カチオンのコンフォメーション変化がもたらす構造相転移について検討した。 結晶中の分子運動が誘電応答に表れる系として、(CHDA^<2+>)([18]crown-6)_2[Ni(dmit)_2]^-_2(1)及び(CHDA^<2+>)(benzo[18]crown-6)_2[Ni(dmit)_2]^-_2(2)を作製した。CHDA^<2+>は、二つbenzo[18]crown-6分子にサンドイッチ型で挟まれ、水素結合相互作用により超分子カチオン構造を形成している。CHDA^<2+>ジカチオンは、二つの-NH_3^+基のN-N軸を回転軸として振り子運動を行う。結晶の誘電率の温度-周波数依存性から、振り子運動の方向に対応する測定で、誘電応答が観測された。ポテンシャルエネルギー計算から、非対称な運動空間の存在が示唆され、分子揺らぎが熱的に活性化される事が判明した。(CMAni^+)([18]crown-6)[Ni(dmit)_2](3)結晶では、153Kに構造相転移が出現した。CMAni^+カチオンのフェニル基の回転運動とp-位のcyanomethyl(-CH_2CN)基の振り子運動が関与した構造相転移を新規に見出した。分子コンフォメーションに自由度のある超分子カチオン構造を利用する事で、分子揺らぎに対応した構造相転移現象が実現できた。
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