2009 Fiscal Year Annual Research Report
ダイマーモット型分子性導体の局所的分子配列変調による電子相制御
Publicly Offered Research
Project Area | New Frontier in Materials Science Opened by Molecular Degrees of Freedom |
Project/Area Number |
21110504
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐々木 孝彦 Tohoku University, 金属材料研究所, 准教授 (20241565)
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Keywords | 分子性導体 / エックス線照射 / ダイマーモット絶縁体 / 電子誘電性 / 分子欠陥 / フラストレーション / 電荷自由度 |
Research Abstract |
本研究では,エックス線照射による分子欠陥の生成などにより有機導体中の幾何学的分子配置によって生み出される電子状態を変調し,新たな電子相転移,電子状態の創出を試みている.本年度はBEDT-TTF分子ダイマーが3角格子構造を有しフラストレーション効果によりスピン液体が実現していると考えられている有機モット絶縁体κ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3においてダイマー構造に由来するスピン,電荷自由度の探索とエックス線照射による分子欠陥導入によるフラストレーションの融解,変調を試みた.2次元面間方向の低周波誘電率測定から50K以下において異常な誘電応答を観測した.誘電率は温度に対して幅広な極大をもちその極大を取る温度は測定周波数が高くなるに従って高温側に変化していく.このような周波数分散を有する低周波誘電率はリラクサー,ダイポールグラスと呼ばれる無機化合物強誘電体に見られる振る舞いと良く似ている.本物質はダイマーモット絶縁体であると考えられているため,低温絶縁体状態では電荷自由度は消失しこのような誘電応答,周波数分散は予期しないものである.この異常な誘電分散の起源として分子ダイマー構造内に電荷自由度が存在しダイマー内での量子力学的ゆらぎにより電荷ダイポールが形成されていることが考えられる.このような電荷自由度による誘電応答はこれまでに知られている格子変位などの誘電機構とは異なる電荷自由度のみによるものである.このため,従来型の誘電機構に比べて光などに対する高速応答などが期待される.またこのような電荷自由度の存在は低温でのスピン自由度に関連してスピン液体状態の起源を探る上での今後の重要な指針となると考えられる.
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