2009 Fiscal Year Annual Research Report
光・磁場・界面を用いたフタロシアニン錯体の電子物性制御
Publicly Offered Research
Project Area | New Frontier in Materials Science Opened by Molecular Degrees of Freedom |
Project/Area Number |
21110509
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田島 裕之 The University of Tokyo, 物性研究所, 准教授 (60207032)
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Keywords | 鉄フタロシアニン / 分子性伝導体 / d-π相互作用 / 巨大負磁気抵抗 / 磁気トルク測定 / 磁気測定 / 電荷分離型フェリ磁性 / 光CELIV法 |
Research Abstract |
(a) Fe(Pc)(CN)_2塩の磁気構造の研究 一連のFe(Pc)(CN)_2塩は、6K以下でいずれも自発磁化を示すが、この自発磁化の起源は明らかでなかった。そこで本研究では、PTMA0.5[Fe(Pc)(CN)_2]・CH_3CNの磁気トルク測定を行い、自発磁化の出現する方向を調べた。この塩の特徴は、磁化容易軸であるCN軸が単結晶のa軸にほぼ平行であることである。実験の結果、自発磁化がa軸、すなわち磁化容易軸であるCN軸に平行であることが判明した。有機物質の反強磁性体が示す寄生強磁性は多くの場合スピンキャンティングによるものとされているが、この場合自発磁化の出現する方向は磁化容易軸に垂直である。したがって、今回の結果は明らかにスピンキャンティングモデルに反する。そこで、代わりに、π電子系の電荷分離を考慮した電荷分離型フェリ磁性モデルを提案した。このモデルでは、一次元反強磁性構造を持っd電子と磁気的に結合したπ電子が、電荷分離により有効的に磁気モーメントを持つというものである。このモデルはまだ実証されていないが、現時点で報告されているX線、NMR等の結果とコンシステントである。本研究成果はPRB誌に公表された。 (b) 定量的高感度磁気トルク測定法の開発とその応用 AFM用カンチレバーを用いた磁気トルク測定は、これまで定性的な実験に用いられてきたが、校正により定量的測定が可能であることを見出した。さらにこの手法をTPP[Fe(Pc)X_2)_2 (X=Br,Cl)に適用し、これらの塩ではπ電子によるフェリ磁性が、d電子による反強磁性短距離秩序に先立ってより高温で出現することを明らかにした。 (c) その他 強磁場、極定温における、光CELIV法の実験を行った。
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