2010 Fiscal Year Annual Research Report
強相関チアジルラジカルの光・電流応答
Publicly Offered Research
Project Area | New Frontier in Materials Science Opened by Molecular Degrees of Freedom |
Project/Area Number |
21110515
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
阿波賀 邦夫 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授 (10202772)
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Keywords | 有機半導体 / 非線形電気伝導 / 有機ラジカル |
Research Abstract |
環状チアジルラジカルの磁気特性や光物性、電気物性を研究した。BDTDAと呼ばれるラジカル分子の光物性を調べたところ、ITO|BDTDA(300nm)|Alなる光学セルが、バイアス電圧なしで巨大な過渡光電流を見せることを見出した。この起源であるが、「BDTDAはラジカルであるという電子構造の特殊性と自分自身の分極に助けられながら、電極界面で効率よく光電荷分離を起こす。BDTDAのLUMOはAlのフェルミ準位よりも高いため、電荷分離によって生じた電子はAl電極に即座に吸収され、ITOとAlの仕事関数の差によってITO側まで移動する。」を結論した。このメカニズムの面白さは、過渡電流は外部回路を通る界面から界面への電流であるため、有機半導体の最大の弱点である移動度の低さや化学的安定性は問題にならない点である。またこの機構を見れば明らかなように、過渡光電流発現に有機層内部の導電性は必要ない。つまり電極界面で電荷分離さえ生じれば、有機層内部を絶縁体に置き換えても同様の過渡光電流を観測できる。このモデルに従って過渡電流生成に特化した、電荷分離層と絶縁分極層からなる二層膜セルを作製した。電荷分離層=ZnPcとC60の共蒸着膜、絶縁分極層=有機ポリマーPVDFとすることにより、予想通りBDTDAのものに匹敵する大きな過渡電流や交流電流が生じ、また絶縁分極層の物質を取りかえて誘電率を制御することによって、過渡光電流の大きさを2ケタ以上変化させることに成功した。
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